2011年アメリカ映画。

 原題はRestless
 「心の休まる場所がない」といったところか。

 美しい映画である。
 画面(撮影)が美しい。
 ロケーション(オレゴン州ポートランド)が美しい。
 主役の少年イーノック(=ヘンリー・ホッパー←デニス・ホッパーの息子)と少女アナベル(=ミア・ワシコウスカ)が美しい。
 人を愛することを通して、愛する人を失うことを通して、「生」の素晴らしさを知るという、ストーリーそのものが美しい。


 いい映画、いい監督の特徴として、「なんてことのないシーンやショットではからずも落涙する」というのがある。
 愛する者との別れのシーン、いろいろゴタゴタあったあとでの再会シーン、あるいは心の奥底からの告白シーンなどで観る者を泣かせることはたやすい。それは、観る者の中にあらかじめ物語に酔うための仕掛けが備わっているからである。人はどんなときに泣くべきかを学習して育つ。
 だから、映画を観ていて「なんでこんなところで涙が出てくるんだろう?」と思う時、それは脳内に構築されている物語の仕掛けを、超えた、裏切った、驚かした、瞬間なのである。
 視覚流動芸術たる映画の有する、文学とは違う、最たる魅力はそこにある。

 主人公のイーノックだけに見える太平洋戦争で亡くなった日本の特攻隊員ヒロシ(=加瀬亮)の幽霊は、孤独なイーノックの作り出した想像上の友人であり、ある意味でヒロシの分身である。「死」に対するイーノックの憧れがこの幽霊を出現させている。ヒロシはまた、アナベルとの出会いによってかき動かされていくイーノックの心情を観る者に伝えるための装置であり、物語全体の狂言回しのような役割を果たしている。

 両親の墓の前でイーノックはヒロシと喧嘩して失神する。これはつまり自殺未遂であろう。病院に運ばれたイーノックのベッドサイドに、ヒロシが現れ謝罪する。
 ヒロシはおもむろに胸ポケットから黄ばんだ古い封筒を取り出す。


 この瞬間、はからずも、落涙したのである。

 それは、ヒロシの持つ手紙の内容のためではない。(それは最後に明かされる) 銃後の恋人や母親からの(への)感動的な手紙だろうと想像したからでもない。胸元から取り出す所作そのものの不意打ち感に撃たれたのである。

 狂言回しに過ぎなかった謎めいた存在であったヒロシが、手紙という事物に象徴される人間関係を持つ存在であった、つまり幽霊から人間になった、ことの驚きなのだろうと思われる。
 その瞬間、イーノックの心の中だけに生きていた虚構がリアリティを持って世界に立ち現れたのである。


 なぜそれが落涙につながるのか。
 虚構と現実のはざまを生きていた幼い頃を記憶している脳細胞に電気信号がつながるからであろうか。
 虚構が現実になることの有り難さ(=不可能性)に悲痛な思いを抱かされるからであろうか。



評価: B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!