2009年フランス映画。
この映画は最後の12分間のためにある。
チャイコフスキー作曲「ヴァイオリン協奏曲」の演奏シーンのために。
そのラスト12分に向かって、物語がじょじょにクレシェンドしながら、海に向かって赤い街を流れてゆくモスクワ河のごとく、華やかなパリの街を流れていくセーヌのように、いくつもの支流が合わせ重なって、最後は感動の海へと観る者(聴く者)を運んでゆく。
ご都合主義たっぷりの分かりやすいストーリーといささか紋切り型の民族描写に、鼻白むよりもなんだか懐かしくなるくらい、昔ながらの直球勝負の映画である。最近の映画は設定もストーリーもテーマも登場人物達の心理も、こむずかしいからなあ~。
久しぶりに、明るい前向きな、気持ちのいい映画を観た。
気持ちの良さの理由の一つは、一人一人のキャラクターに注がれる愛情のためである。端役に至るまで魅力的な人物造形がなされていて、それぞれに見せ所が用意されている。役者としては冥利に尽きるだろう。
楽団のユダヤ人の親子、パリの劇場の支配人♂とその秘書♂(この二人、最後にはチャイ子のオネエ的な音楽にほだされて結ばれてしまう)、第一ヴァイオリンのロマ(ジプシー)、熱烈な共産党員の楽団マネジャー・・・・。紋切り型であるからこそ、様々な国籍、人種、文化、愛の形が、それぞれのモチーフ(動機)を分かりやすく奏でながら、入れ替わり立ち替わり観る者に提示され、違うからこそ美しい多様性という名のハーモニーを編み出していく。
まさに人間讃歌の協奏曲である。
音楽の力で物語を収斂させつつコンサートシーンで幕を閉じるという意味では、本邦の名作『砂の器』を思い出すけれど、人の世の不寛容と哀しみと絶望を描いたあの作品とは、正反対の座標にある。
見終わった後、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」のCDを買いに行きたくなること必定である。(今日仕事帰りにタワーレコードに寄ろうっと)
評価: B+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!