2002年日活。
天願大介作品はこれで3本目となる。
最も新しい『デンデラ』から昔のものへとさかのぼって観ているが、どの作品も水準以上である。稚拙さはまったく感じられない。
交通事故で下半身不随、絶望のどん底から合気柔術との出会いによって生きがいを見出していく車椅子の青年の話(実際にモデルとなった人物がいる)を描いたこの作品も、映画としての完成度と青春ドラマとしての娯楽性との見事な一致を見ている。石橋凌や火野正平らバイプレイヤーの使い方もあいかわらず達者である。
何より凄いのは、物語に引き込む力であろう。
題材の面白さや脚本の素晴らしさももちろんあるが、物語世界に観る者をあっという間に引っ張り込み、映画の中の「時間と空間」を体験させてしまう。それも派手な演出や展開による強引な心理操作によるのでもなく、「泣き落とし」のような紋切り型の感情操作によるのでもなく、知らぬ間に観る者の心の構えを解いてしまい、批評する気を失わせてしまい、監督の呈示する作品世界に浸透(シンクロ)させてしまう。
この魔力は、まさに「相手をいったん受け入れることによって相手の気を読み取り、自らの気と合わせてしまう」と天願監督が語る合気道の精神に通じるものである。
そう、この作品自体が、いや天願大介の作品自体が、合気柔術なのである。
その意味では、この作品は天願監督のスタイルの根幹となるものが、もっともストレートに、わかりやすく、表現されたものと言えるかもしれない。
『デンデラ』・・・・姥捨山に捨てられた老女たちの共同体。
『世界で一番美しい夜』・・・・社会のはみ出した者たちによる性による平和革命。
『AIKI』・・・・青年が障害を持ったことで発見する世界の豊饒。
天願大介の映画は、観る者に「自分は受け入れられている」という感覚を与える。居場所を失った者たちに、ひとときの優しい夢を用意する。それが、天願作品の持つ童話的な風味の秘密なのであろう。
評価:B+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!