2010年カナダ映画。

 原題のIncendiesは「火事」という意味らしい。
 原題も邦題もあまりセンスが良いとは思えないし、作品の内容に合っているとも思えない。
 と言って、ではどんなタイトルがこの作品にふさわしいかを考えた時に、「う~む・・・」と腕を組んで唸ってしまわざるを得ない、そんな作品である。


 一言で言えば、「一人の母をめぐる恐ろしい愛の物語」ということになる。
 双子の姉弟が辿る亡き母の秘められた過去への旅、という意味でミステリーの範疇に入るのであるが、戦火の中東を舞台にしたドラマの壮大さと驚愕の結末は、この作品を一挙に叙事詩とも悲劇とも言いうる領域に押し上げる。
 とりわけ、思い出さざるを得ないのはギリシア悲劇『オイディプス』である。(オイディプスという名前は「腫れた踵」という意味がある。)


 運命の不条理に弄ばれる人間の脆弱さ、と共に、運命を甘んじて受け入れつつ愛することを全うする人間の(母親の)限りない強さ。
 
 というふうに「運命」という言葉を(二度も!)用いざるをえないほどに、この作品は深甚なのである。

 もう一つ思い出したのは邦画で『悪魔が来たりて笛を吹く』であった。
 ギリシア悲劇と横溝正史とは、思いがけない組み合わせであるが、考えてみると、上記の文は、まさに『犬神家の一族』や『悪魔の手鞠唄』にもあてはまるではないか。横溝作品とは、日本版ギリシア悲劇なのかもしれない。


 これ以上、ネタばれは避けるべきだろう。
  
 ただ、見終わった後に自問してほしい。
 登場人物の中で誰が一番つらいだろうか、と。
 母親か。双子の姉弟か。姉弟の父親か、それとも姉弟の兄か。
 そして、なぜそう思うのか。


 自分は双子の姉弟が一番つらいと思ったのだが、それは横溝的なものに象徴される日本の風土に洗脳されているからかもしれない。


 何を言っているのか、よく分からん?


 まずは映画を観てほしい。
 見ごたえのある映画であることは保証する。



評価:B+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!