2009年アメリカ映画。

 アメリカのドラマや映画を観ていると、当然日本文化にないアメリカ人の風習に気づく。その代表的なものの一つが「バチェラーパーティー」である。日本語でこれに相当する言葉(=概念)がない。そして、多くのアメリカの風習をカタカナ語にして輸入してきた日本文化だが、なぜか「バチェラーパーティー」はいまだに浸透していない。他では「プロム」と「ガレージセール」もそうか。

  自由を謳歌した独身(バチェラー)生活ともついにおさらば。結婚を前に仲のいいダチ公とつるんで最後の羽目を外そう。酒だ、女だ、ギャンブルだ、男同士の乱痴気騒ぎだ、無駄遣いだあ~・・・・・・というのがバチェラーパーティーである。
 花婿ダグとその友人らはラスベガスの一流ホテルに泊まり、一夜の狂乱に我を忘れる。これが単なる二日酔い(hangover)でなく、知らずに飲んだ麻薬の影響で本当に我を忘れてしまう。翌朝目覚めると、ホテルの部屋はとんでもない混乱状態に陥っていて、花婿は消えていた。いったい一晩の間に何があったのか? 花婿を見つけて結婚式に間に合うよう無事帰ることができるのか。
 空白の記憶を探り出し消えた花婿を探すという点ではミステリー。理由も分からずなぜか怪しい一味に付けねらわれるという点ではサスペンス。花嫁はじめ親戚一同がイライラして待っている結婚式に間に合うよう帰れるのかという点ではスリラー。全体としては、肩の力を抜いて観るにふさわしいお間抜けなコメディである。
 テンポも良い。脚本も良い。登場人物一人一人のキャラが立っている。特に、花嫁の弟アランを演じたザック・ガリフィアナキスの「変人」演技は際立っている。素か演技か分からないほどである。「超」のつくオタクな変人なのに、どういうわけか愛くるしさを感じさせ、タグの古くからの友人たちの輪に納まって仲間として受け入れられてしまう。観る者も最後はアランというキャラを楽しんでいる自分に気づく。こうしたキャラを創造できる演技力はかなりの質の高さであろう。注目の俳優である。 同じメンバーで続編が見たいものだ。
 と思っていたら、すでに続編があった。ザックも同じ役で出ているらしい。観てみよう。

 バチェラーパーティーが日本に根付かないのは、日本の男は結婚前と結婚後とでアメリカの男ほど失うものがないからであろう。「結婚は人生の墓場」とはよく聞く言葉であるが、日本にはもともとそういう考えはなかった。少なくとも男に限って言えば。
 日本の男は、結婚しても女遊びするし、ギャンブルもするし、酒も飲むし、男同士つるんでバカ騒ぎもする。
 結婚によって一人の女性に縛られる、家族のくびきにつながれるというのは、アメリカ文化の根底を形作っているキリスト教の影響であろう。唯一絶対神の前で誓い合うのであるから縛りは強い。日本の神と来たら、平気で浮気はするし(ヤマトタケル)、酒は飲んで乱暴するし(スサノオ)、子殺しすらする(イザナギ)。神前結婚にはなんの縛りもない。せいぜい「産めよ、増やせよ」くらいだ。
 さて、どっちが幸せなんだろう?
 男にとって。
 女にとって。


評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!