2011年、イタリア映画。
タイトルと、「コメディ」というジャンル表示と、DVDパッケージのあらすじとから自分が思い描いていたストーリーは↓
心ならずもコンクラーヴェで法王に選出されてしまったメルヴィル枢機卿(ミシェル・ピッコリ)は、巨大なプレッシャーに耐えきれずバチカンからローマの街に逃げ出してしまう。
そこで出会った市井の人々との交流の数々。民衆の悩みや喜びや苦しみや素朴な信仰心に触れるなかで自らの信仰のきっかけを思い出し、使命を自覚し、バチカンに帰還。晴れて法王の座に着く。
途中までは確かにこの通り進むのだが、最後の最後に裏切られた。
メルヴィルはバチカンに帰還する。が、サン・ピエトロ広場に集まった大観衆の前で、いやメディアを通じ一連の騒動に注目していた世界じゅうの人々の前で、法王になることを拒絶するのである。
メルヴィルは言う。
「神が間違うわけがない」
「私が神によって選ばれたのも間違いない」
ならば、結論はどうしたってこうなるはずだ。
「私が法王になるのは正しい」
で、ありながら、メルヴィルは睨座を拒否するのである。
これは究極の謙虚なのか。自己卑下なのか。
メルヴィルの真意はよく分からない。監督の意図はよく分からない。
けれど、「えっ?」と驚く結末であった。
この意外性は、しかし、予想していた展開が見事に裏切られたことからくる「痛快さ」「一本とられた!」にはつながらない。すっきりはしないのである。コメディと思って観ていたものが、最後の最後で何だか哲学的様相を帯びて、戸惑うのである。
メルヴィルの爆弾宣言でバチカンは揺れる。帰還に安堵していた枢機卿たちはショックで顔を引きつらせる。
それでジ・エンド。
なんだろうな、この結末は?
『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督なら、おそらく最初に自分が掲げた予想通りの物語を、笑いと涙とスピリチュアル的感動とで十全に描き出すであろう。実はそれを期待していた。たまにはそんなベタな物語に酔いたいという気持ちもあってレンタルしたのである。
ナンニ・モレッティ監督は食わせ者だ。
メルヴィルは法王の座を拒否し、世界の期待を裏切って、カトリックの長としての役割を放棄した。
それは法王としてはもちろん失格以前の話である。
しかし、逆説的だが、型どおりの「物語」を崩壊させてはじめて、バチカンを「外に向かって開いた」と言えるのかもしれない。
メルヴィルの行為は、世界中に議論を巻き起こし、キリスト者をはじめ宗教を信じる者たちに問いを突きつけることになるだろう。
「信仰とは何か?」
「バチカンや法王の存在意義は?」
「コンクラーヴェの意義は?」
そして、前法王の崩御が自動的に新法王の選出&誕生をもたらすという伝統に、あたかもそれが一大エンターテインメントであるかのごとく慣れきってしまい(だれが法王になるかの賭のオッズまで新聞に掲載される)、思考停止に陥っている大衆の無知蒙昧ぶり。
その意味で、メルヴィルは、法王になることでよりも、法王になることを拒否したことで、結果的にはより「信仰」「伝統」という問題について人々が自らを省みるきっかけを作ったと言えるかもしれない。
それも神の意図か?
評価:C+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!