涅槃姫みどろ 『週刊少年チャンピオン』に2006年2月から2007年3月まで連載された一話完結型の学園ホラーである。
 古本屋で全巻(1~6)まとめて売られていたが、表紙のかっこ良さと仏教的響きに惹かれて購入。

 深泥(みどろ)という名の美しい女子高生が転校を繰り返しながら、業の深い人物たちを得意の呪術によって涅槃(本来の意とは違って「地獄」のことらしい)に送り込む、というのが基本スタイル。
 『チャンピオン』黄金時代に『ブラックジャック』や『ドカベン』と共に人気の高かった古賀新一の『エコエコアザラク』(1975年9月~1979年4月)へのオマージュというか、焼き直しという感がある。もっとも、黒井ミサの使ったのは黒魔術であったが・・・。
 絵は現代風であたかもパソコン上で描いたように線が平板で陰影に乏しく、古賀新一の持っていたおどろおどろしい不吉な感触はない。コマ割りもほぼ四角形だけで、躍動感に欠ける。
 しかし、ネーム(ストーリー)は十分練られていて、大人の鑑賞にも耐える。ブラックオチが用意されている怪奇短編を読んでいるような面白さがある。

 みどろが、涅槃に送り込む人物に投げかける際の決めゼリフがある。

「厄いわ」

 振り払われた長い黒髪の下から、いつもは隠されている赤い左目が不気味に光る。

 一番厄かったのは、読者プレゼントで不正を働いた版元の秋田書店であった。