2012年イタリア・フランス制作。

 シンデレラと王子様が馬車でお城へご帰還、みたいなファンタジー風冒頭から始まって、派手で陽気な結婚式に専用機で文字通り「飛び入り」するテレビスター、それに口づけを強要するドラッグクイーンの参列者・・・・と、何の説明もない、わけのわからないシーンの連続に、「いったいこれは何の話なんだ?」「主役は誰なんだ?」と頭の中をいっぱいの「?」が飛び交う。「もしかしてこれ(DVD)を借りたのは失敗だったかも・・・」という一抹の不安を抱きつつ。
 それでも見続けてしまうのは、映像の個性による。
 カラフルな色彩の氾濫、登場人物(デブばかり)の大道芸風たたずまいに、「キャンプ」を感じるからである。
 「キャンプ」とは、スーザン・ソンダグの定義によると、「感覚の自然なあり方よりも不自然なもの、人工的なもの、誇張されたものを愛好する感受性」である。「女装」の意味や意図を超越した「ドラッグクイーン」は、まさに代表的なものだろう。
 イタリア制作でナポリが舞台ということも手伝ってか、フェデリコ・フェリーニ(『アマルコルド』あたり)を想起したのだが、大道芸人を好んで描いたフェリーニ作品は「キャンプ」と言っていいのかもしれない。
 というより、イタリア人ってみな「キャンプ」なものが好きなんじゃないかという気がする。だからこその、芸術の国、料理の国、オペラの国なのだろう。イタリア人が最も好きな女優は一昔前ならソフィア・ローレン、今はモニカ・ベルッチっていうのが、まさにキャンピー感覚である。
 「キャンプ」を別の言葉で表現するなら「毒食らわば皿まで」であろう。
 
 ナポリで魚屋を営む陽気なルチャーノは、たまたま受けた人気テレビ番組のオーディションで手応えを感じ、「自分は合格した」と思い込み、すっかりその気になってしまう。長期ロケのために魚屋をたたみ、テレビ局から覆面調査員が来ていると思いこみ家財を貧乏人に投げ与える。結果、愛する妻と喧嘩して子供たちとも離れ離れに。
 それでも夢をあきらめられない、妄想から抜けられないルチャーノ。
 
 陽気で人好きで家族愛に満ちたナポリ人(ナポレターノ)のSimpatico(親しみやすい)雰囲気が活写されていて楽しめるが、物語自体は破綻も、どんでん返しも、サプライズも、ひねりもない。その意味では「キャンプ」なのは外観だけであった。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!