2010年スペイン、フランス制作。

 Black Bread(黒パン)とは一般に「貧しさ」の象徴である。
 日々の糧を得るのに苦労する困窮の中で、人はどのように苦しみ、押しつぶされ、歪み、誘惑され、欲望に負け、墜落していくか。愛する者を守るためにどのように自らを犠牲にしていくか。
 少年の視点からこういったことを描ききった骨太のファミリードラマ&ミステリーである。
 と同時に、少年の成長物語である。
 ただその成長は『スタンド・バイ・ミー』のような爽やかなものも、『わが谷は緑なりき』のような正統なものでもない。少年アンドレウは、大人の醜さを知り、世間の酷さを知り、尊敬すべき両親の偽善と悪を知り、人の心の闇を知り、無垢を失っていく。周囲を信じられなくなって次第に利己的になっていく彼の成長は、決して成熟ではない
 わが子の為に良かれと思って行った数々の行為が、結果としてわが子を駄目にしていく。その悲しさは、1940年代のスペインの貧しい家庭も、2010年代の日本の裕福な家庭も、同じである。
 その理由の一つは、宗教心の欠如にあるのではなかろうか。
 左翼思想の持ち主であるアンドレウの父親ファリオルは、おそらく無宗教者であろう。映画の中では一家が祈るシーンがまったく出てこない。この時代のスペインではむしろ珍しいであろう。そして、宗教心を持たないファリオルが、物質的な価値観に最終的に支配されてしまうのは、今の中国を見ればよく理解される。

 その点からもタイトルを解釈すべきだろう。
 赤ワインがキリストの血を意味するように、黒パンはキリストの肉を意味するからである。
 
 それにしても、世間の汚れに対する純なる者の象徴として、村人に拷問され殺された同性愛の美青年と、教会に静養する病んだ美青年を配するあたり、監督の指向なのか。原作者であるエミリ・テシドールの趣味なのか。 
 興味深い。



評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!