1959年大映。

 60年代の時代劇映画黄金期の大映の二大看板、市川雷蔵と勝新太郎の共演、競演、狂演、凶演、響演、驚演--である。ほんと、ゴージャスな時代もあったもんだ。
 と言っても、撮影当時、雷蔵はすでに人気・実力兼ね備えた押しも押されぬトップスター。一方、勝新はまだ代名詞と言える「座頭市」に出会っておらず、鳴かず飛ばずの巣籠り状態にあった。間違いなく主役は市川雷蔵である。
 でありながら、当時のそんな様子を知らない人がこの作品を見ても、勝新が雷蔵と堂々と渡り合っていて、演技も存在感も魅力も只者ならぬものがあることを認めるだろう。二人が、その後「カツライス」と並び称される最強ライバルになる、その予兆をはらんだ作品と言えよう。
 勝新と雷蔵の関係は、「陽と陰、太陽と月、動と静、明と暗、火と水」みたいなものであろうか。勝新が浅田真央、雷蔵がキム・ヨナか。演技のタイプもそうかもしれない。勝新と真央は何を演じても勝新、何を演じても真央が前面に出てくる。個性の魅力が強すぎる。雷蔵とキム・ヨナは演じる役によって雰囲気や表情を多彩に変えることができる。大衆受けするのは勝新と真央、専門受けするのはキム・ヨナと雷蔵かもしれない。
 
 それにしても雷蔵はかっこいい。
 当たり役となった眠狂四郎で到達した「虚無感、ダンディズム、ニヒリズム」の演技は、雷蔵の地の部分(複雑な生い立ち)に由来するようだが、こうした翳りのあるイケメン役者を他に挙げるとしたら『羅生門』『雨月物語』の森雅之、最近では西島秀俊あたりか。清潔感では雷蔵が際立っている。やはり、元歌舞伎役者として立ち居振舞いの美しさと品格のせいであろうか。
 しばらく雷蔵を追うことになりそうだ。

 森一生の映画を観るのはもしかしたらこれが始めてかもしれないが、最後の雪の中の片手片足の立ち回りシーンは、映画史に残る凄さである。必見。



評価:B+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」        

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
      
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!