聖天(しょうてん)も茶枳尼(だきに)も、ヒンドゥー教の神様に起源を持つ仏教の守護神である。
 聖天は、歓喜天、象鼻天とも言われ、多くは象頭人身の単身像、または抱擁している象頭人身の双身像の姿で表される。本地垂迹説では十一面観音菩薩の化身である。
 茶枳尼は、一般に白狐に乗る天女の姿で表され、剣、宝珠、稲束、鎌などを持物とする。日本では稲荷信仰と習合し、寺院の鎮守稲荷の多くは荼枳尼天を御神体としている。
 どちらの神様も祈願すれば叶わぬ願いはないと言われるほど効験あらたかなのだが、祀るのが非常に難しく、生涯かけて正しく祀らないと怒りだして子孫に至るまでの災いをもたらす、という恐ろしい神様でもある。
 そこで、昔から「下手に近づくな」と戒められてきたのである。
 とりわけ、聖天様は2体の象がみっちりと抱擁した形態が男根のシルエットを映し出すセクシュアルなお姿のためもあってか、古来秘仏とされ、厨子の中に納められているのが一般で、行者以外が目にしたら命にかかわるとまで言われている。
 
聖天様 001 この聖天様にまつわる不思議なエピソードを描いた漫画が、永久保貴一の『密教僧秋月慈童の秘儀 霊験修法曼荼羅』(朝日新聞出版)である。
 永久保の作品は、どれも面白くて、不思議で、奥が深くて、勉強になるが、特にこの作品は実在の密教僧の体験談をもとにしたノンフィクションだから、「いやあ。この世にはまだまだ人知の及ばぬことがたくさんある、不思議な力を持つ人がいるもんだ」と謙虚にならざるをえなくなる。
 現在2巻出ているが、続きが楽しみである。

 さて、日本の三大聖天様の一つが、浅草の待乳山聖天である。「まつちやましょうでん」と読む。 

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待乳山は、浅草は隅田川の西岸に臨む海抜九米半、わずか千坪に満たない小丘陵でありますが、下町の平坦な地の一画に、うっそうとした木立に囲まれた優美な山の姿が、遠い昔から多くの人々の関心を呼び起こしてきたといえましょう。
 
推古三年九月二十日、浅草寺観世音ご出現の先瑞として一夜のうちに湧現した霊山で、その時金龍が舞い降り、この山を守護したことから金龍山と号するようになった。その後、同じく推古九年夏、この地方が大旱魃に見舞われた時、十一面観世音菩薩が悲愍の眼を開き、大聖歓喜天と現われたまい、神力方便の御力をもって、この山にお降りになり、天下萬民の苦悩をお救いあそばされた。これがこの山に尊天が鎮座ましました起源であると記されております。
(待乳山本龍院の案内パンフレットより)

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 正面から階段を上る参道のほかに、正面右側に回って、隅田川の方角から入る門がある。ここから入ると、小さな可愛らしいケーブルカーを使って本堂まで上がることができる。足の悪い人はこちらを利用すると良い。

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 本堂は立派である。
 中に入って座敷で祈ることができる。
 ここでビックリするのが、目の前の祭壇に積まれた大根の山。
 ?????とハテナマークが頭の中を飛び交う。

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 実は、大根と巾着が聖天様のトレードマークなのである。
 大根は、人間の迷いの心、怒りの毒を表し、大根を供えることで聖天様がこの体の毒を洗い清めてくださる。巾着は商売繁盛を表し、聖天様の信仰のご利益の大きいことを示す。
 境内のあちらこちらに大根と巾着の意匠を発見することができる。

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 境内からはスカイツリーがきれいに見える。
 また、庭園も見ることができる。

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 仏教的な聖天様の意義は、仏道修行に専念できるよう、まず身内にある強い欲望を叶えてくれるところにあるそうな・・・。
 
 おみくじを引いたら、じゃーん、だった。

 
 生きとし生けるものが幸福でありますように。