1962年大映。
時代劇の巨匠三隅研次監督の美的センスの冴える映像と、雷様こと市川雷蔵の臈たけた魅力を楽しめる作品。
それだけで十分という気もするが、物語的にはもの足りない。というか、もったいない。
自死(切腹)で終わる一人の剣客・高倉信吾(=雷蔵)の波乱の生涯を描いた物語なのだが、物語の枷とも動因ともなるのが信吾の出生の秘密である。
信吾の母親は、自らが仕えていた主君の愛妾を手にかけて打ち首となる。その際の処刑人こそが信吾の父親であった。生まれて間もない信吾は秘密裡に高倉家の養子となり、何も知らないまま成長し、義父を実の父と思い尊敬し、義妹を実の妹と思い可愛がってきたのであった。
これは物語の枷としては十分すぎる仕掛けである。この秘密を信吾がいつどうやって知るか、知った後に義父や義妹との関係はどう変わるか、この衝撃をどう乗り越えるか、母親の起こした殺人事件の内容をどのように知るか、それをどう受け止めるか、生存している実の父親とどのように再会を果たすか・・・。
語りどころ満載、見所満載になるはずである。
しかし、そこがうまく活かされていないのである。
せっかく観る者を最後まで惹きつける魅力的な仕掛けが用意されていながら、脚本(新藤兼人)が拙いせいで不発に終わってしまっている。
残念至極。
同じような出自のトラウマを物語の動因としてうまく活用し展開した『破戒』(市川昆監督)や『源氏物語』(森一生監督)とくらべると、そのもったいなさは明らかである。
映像が素晴らしいだけにかえって惜しまれる。
評価:C+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!