1960年松竹。

 

 著者が嫌いなので読んでいないのだが、『太陽の季節』ははたして傑作なのだろうか。

 芥川賞を獲ったという事実は、この小説が時代や風俗を超えたあるレベルの普遍性に達している、人間の真実の一面を突いている、すなわち一級の純文学として認められた、と解釈したいところであるが、実際どうなんだろう?(芥川賞を買いかぶり過ぎ?)

 『太陽の季節』も、同じく芥川賞を獲った村上龍の『限りなく透明に近いブルー』も、その時代時代の若者の姿を生々しく描いたことで評判となった。それは、体制に組み入られた大人達の知らない「今の」若者像であり、古い世代の価値観を震撼とさせる反社会的、反道徳的な登場人物たちの言動の数々が、世間に衝撃を与え、ベストセラーになった。

 現時点で(2014年)両作品を読むときに、作品が発表されたときの衝撃はもはや感じられまい。ペニスで障子を突き破る青年も、腕にヒロポンを突き刺すうら若き女性も、当節では斬新さはない。つまり、発表当時に世間が受けた衝撃や目新しさはもはや薄れている。両作品は平成時代の我々が持つ価値観では、もはや体感できるほどの震度を持たないであろう。

 そうした「スキャンダラスで勝負」というレベルを超えて、両作品が平成時代の読者に感動をもたらすとしたら、それは普遍性を獲得したということになるのだが、はたしてどうなのだろう?

 いつの時代でも変わることのない「青春の蹉跌」を描くことに成功しているのだろうか。

 

 『青春残酷物語』は明らかに成功している。

 松竹ヌーベルバーグという言葉を知らない世代が観ても、夜道をバイクで飛ばすことや、助平親父を手玉にとって美人局まがいの恐喝をすることや、性の相手をすることで年増女を金づるにすることなんかに、かほどの目新しさも覚えないであろう今の若い世代が見ても、この映画で描き出されている「青春の息苦しさ」「やり場のない怒り」「煮えたぎる欲望」「根拠のない楽天主義と不安と挫折」は共感できるところであろう。

 いつの時代でも変わらぬ「若さの受難」をあますところなく描ききっている。

 主人公の学生・清(=川津祐介)が、堕胎させた恋人マコ(=桑野みゆき)の寝姿を前に、ただひたすら林檎を齧るシーンがある。何のセリフもない、何の脈絡もない、ただポリポリと林檎を齧る音だけが暗闇に響く。

 観る者は、なんてことないそのシーンに「若さの受難」のすべてを感得する。

 こんな芸当ができる大島渚はやはり偉大な監督である。

 

 食わず嫌いしないで『太陽の季節』を読んでみるか。

 

 

評価:B+



A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!