DVDノルマ2001
収録日 2001年3月7日
劇場  パルマ王立劇場(イタリア)

キャスト
 指揮  ファビオ・ビオンテ
 演出  ロベルト・アンド
 演奏  エウローパ・ガランテ
 合唱  ヴェルディ・フェスティバル合唱団
 歌手  ノルマ     : ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
      ポリオーネ  : シン・ヨン・フン(テノール)
      アダルジーザ : ダニエラ・バルチェッローナ(メゾソプラノ)
      オロヴェーゾ   : イルダール・アブドラザコフ(バス)

 ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(享年34歳!)の最大傑作である『ノルマ』。
 このタイトルロール(主役)を歌うことが、世界中のソプラノ歌手の夢であり、野望であり、ゴールであり、真のプリマドンナたる証明である。
 声質や声量の点からはじめからどうあがいても歌うことの叶わない歌手もいるのだが、年齢と共に声が重くなり、技術的にも完成の域に達し、舞台経験を重ねて貫禄も演技力もカリスマ性も備わってきた段階で、しかしスタミナと高音域がまだ十分保たれている段階で、満を持して、この『ノルマ』に挑戦するというのが、昨今のソプラノ歌手の王道と言える。
 この流れの礎を築いたのは、やはりマリア・カラスであろう。
 カラスのノルマこそは、ソプラノ歌手がオペラにおいて成し遂げられる芸術的頂点だからである。ソプラノ歌手のオペラ人生の集大成が『ノルマ』に托される。

 ノルマを歌う難しさは、声楽的(技術的)な面はもちろんであるが、最初から最後までほとんど舞台に出ずっぱりで歌いっぱなしという過酷な役柄にあって、最後までしっかり歌いきり演じきるだけの耐久力と心身のコントロール力を要求されるところにある。そしてまた、ドルイド教徒たちの聖なる巫女であり、異教徒を愛し嫉妬と怒りに狂う女であり、二人の子を持つ母であり、一族の長を庇護者に持つ娘であり、一族を裏切る罪人である、という、いくつもの複雑な役を演じ分けられるだけの、人間的な大きさと深みとを備えた歌唱力と演技力とが歌い手に求められるところにある。娘っ子では到底演じられない。

 ジューン・アンダーソンは1952年生まれだから、このとき49歳。
 声楽的には最盛期を過ぎてやや厳しい時期にさしかかっている(アリアや重唱での決めの超絶高音を避けている)ものの、まだまだ声は豊かで美しく力強い。もとはコロラトゥーラソプラノだったこともあって技巧は完璧。
 演技はすごい上手ってほどではないが、場面に応じて的確であり、音楽に合った動きが印象的であり、風格があり、表情には彩がある。
 なにより感服するのは、最後まで持続する集中力と声の威力。終幕まで息切れも声の衰えも疲れもみせない。コントロールが達者。つまり、彼女は知性的な人間なのだろう。
 アダルジーザ役のダニエラ・バルチェッローナは出色の出来。豊麗な声を自在にコントロールしながら、大柄な体格とおばさん容姿を感じさせない演技力とで、恋に落ちた娘の喜びと苦悩を描き出している。
 二人の素晴らしいディーバにはさまれたポリオーネ(=シン・ヨン・フン)は決して出来は悪くはないのだが、小物感を脱しきれず、埋没してしまっている。黒のコスチュームもまるで忍者のようで(東洋人だけに)、二人の女性を祭壇から引き離し翻弄する色男とは思われない。
 オロヴェーゾ役のイルダール・アブドラザコフも素晴らしい。舞台映えする体格と容姿、あたたかみあるよく通る低音。主役級のバス歌手である。

 しかし、30歳でこの曲を書いたベッリーニは、本当に天才。