1995年イギリス映画。

 英国田園地帯の美しい風景。
 堅牢にして広壮な由緒あるゴシック風の館。
 色彩豊かでシックなデザインの家具調度。
 見るからに高級で上質でファッショナブルな衣装を普段着のように着こなす八頭身の美男美女。
 ため息の出るような手の届かない世界の中で、謎を深めながら静かに進行する幽霊譚。
 ずばり自分(ソルティ)の好みを直撃する映画である。
 撮影を担当しているのが、同じイギリス上流階級映画である『眺めのいい部屋』(ジェイムズ・アイボリー、1986年)のトニー・ピアース=ロバーツだけあって、とにかく映像の美しさが際立つ。それだけとっても十分見る価値はあるのだが、これが映画初主演となった21歳のケイト・ベッキンセールの東洋風の瑞々しい美貌と大理石のように輝く白い裸体は、女性やゲイの鑑賞者にとっても‘眼福’と言ってよいレベルである。
 
 恐くはない。
 ホラーというよりオカルトミステリー。
 主要な登場人物も片手で数えられるくらい。
 最後にどんでん返しが待っているところも含め、ニコール・キッドマン主演の傑作オカルトミステリー『アザーズ』(アレハンドロ・アメナーバル監督、2001年)を想起する。
 いやいや、制作年から言ってこちらが本家である。これは『アザーズ』の元ネタなのかもしれない。
 
 好きなタイプの映画なのに、途中まで以前観たことに気づかなかった。筋も忘れていた。ベッキンセールのヌードを忘れられるなんて、ノンケの男ならありえないだろう。(笑)
 一方、『アザーズ』を忘れることなどありえそうもない。
 この違いは何だろう?
 考察するに、『アザーズ』にあって『月下の恋』に存在しないものがある。
 それは‘哀しみ’である。
 『アザーズ』で心に残るのは、ラストシーンですべてが白日の下にさらされたあと、ニコール・キッドマン演じる母親が二人の(自分が手にかけた)子どもを抱きながらモノローグする姿である。あの何とも切ない‘人間的な’モノローグが、作品を単なるオカルトミステリーやホラーから、情念のドラマに格上げする。彼女が霊として蘇えらなければならなかった悲しい宿命に観る者もまた涙する。
 『月下の恋』にももちろん人間ドラマはある。
 主役の二人、デイヴィッド(=エイダン・クイン)とジュリエット(=ケイト・ベッキンセール)の最後には破綻するラブロマンスはある。
 しかしそれは‘哀しみ’ではない。
 ジュリエット兄妹が亡くなった理由もまた哀しみとはかけ離れた‘おぞましい’ものだ。
 
 観る者の心になんら感動を残さない。
 その点で、二匹目のどじょうである『アザーズ』に軍配は上がる。
 
 
評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
   
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!