2013年イギリス。

 2003年に英国で実際に起こった少年事件をもとに作られたという。
 イギリスってのは昔から、これまでの常識(良識)を覆すような新奇な犯罪事件の発祥地になりやすい――っていうイメージがある。思いつくだけでも、「切り裂きジャック」「メアリー・ベル」・・・・・
 あれ??? そんなもんか。
 わかった!!
 シャーロック・ホームズ、ブラウン神父、エルキュール・ポワロという三大名探偵を生み出したミステリー王国ならではのイメージなのだ。歴史上の推理小説の独創性は、ほぼ上記3人が登場する小説群によって開拓されたのである。新奇なトリックが生まれやすい土壌があるのかもしれない。なんと言っても世界で最初の市民革命を、産業革命を起こした国である。発想の飛躍を是とするところ、良きにつけ悪しきにつけ‘世界初’を栄誉とするところが国民性のうちにあるのだろう。 

 この映画のもととなった事件の新奇性は、表に現われた実際の少年同士の殺傷事件に至るまでのすべての過程が、インターネットのチャットルーム内で進行したというところにある。
 主人公の少年マークは、チャットルームで知り合った年上の女性レイチェルに恋をし、彼女を恋人ケビンの暴力から助けるために発奮する。自殺したレイチェルのため、ケビンに復讐をはかろうとする過程で英国諜報部(MI5)のエージェントとチャット上で知り合い、そのエージェントに操られて、クラスメートの親友ジョンを路上で殺傷する。マークがジョンをナイフで刺すという現実の事件の動機はすべてチャットルームで形作られていく。
 だが、レイチェルもケビンもMI5のエージェントもみな、ネットに挙げられた顔写真とハンドルネームとメールのやりとりだけの架空の存在だったのである。すべては、マークに目をつけたある一人の人物が、マークをそそのかして親友のジョンを殺すために仕掛けたトリックだったのである。マークは殺人者に仕立て上げられたのであった。トリックの仕掛け人の天才ぶりに驚かされる。
 主人公二人の少年の演技もよいし、脚本もよく出来ている。
 
 マークは、架空の人物たちの織り成す架空の物語を頭から信じ込んでいっぱい喰わされたわけである。マークの信じた物語は、ネットの中にしかなく、還元すればマークの頭の中にしかない妄想だった。妄想を現実と信じ、いいように感情を操られて、実際の犯罪に手を染めたのであった。
 愚かであろうか。
 大人たちは、ネット上の人間関係をリアルに受け取る現代の若者の愚かさを笑うであろうか。

 思うに、マークの嵌まった罠は、ネットの外にいて‘本物の’現実を生きているつもりの大人たちもまた同じように嵌められている。
 なぜなら、ネット内であろうとネット外であろうと、結局、我々の生きている現実は、我々ひとりひとりの頭の中の妄想を材料として組み立てられているからである。だれもが、自分の主観によって感情を良くも悪くも掻き立てられながら生きている。主観という妄想によって――。
 自分はマークを笑えない。 



評価:B-


A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!