2005年発行。

土師宮(はじのみや)神社の神主の娘・高校生の鷲宮麻美と修行中のイケメン神官・滝上、霊能力を持つ二人が遭遇する摩訶不思議な霊的事件を読み切り形式で描くオカルトホラー。
舞台が神社だけあって、神社特有の慣わしや行事、そして土地の神様などが登場する。その意味で、ホラーというよりも民俗漫画といった印象が強い。
実際、永久保の作品はどれも民俗学的色合いが濃い。忘れ去られた日本の民俗文化、秘められた日本の風習や禁忌が、作品の主要なモチーフとなっているものが多い。
実際、永久保の作品はどれも民俗学的色合いが濃い。忘れ去られた日本の民俗文化、秘められた日本の風習や禁忌が、作品の主要なモチーフとなっているものが多い。
そこが永久保作品のユニークかつ奥深いところである。
そしてまた積年の怨念にかられて現代人に憑依し、祟り、呪い、取り殺す古(いにしえ)の霊たちを、単なる退治すべき‘邪’として描かずに、その怨念の形成されるに至った悲しき物語を提示し、怨霊として苦界を生き長らえなければならなかった者たちの悲しき宿命と同情すべき背景を読者に伝え想像させることで、ストーリーを単なる‘ゴーストバスターズ’の勧善懲悪に終わらせず、真の悪は人の世の冷たさや無知蒙昧や欲深さや陋習にあることを示唆し、最終的には怨霊たちの救い(=浄化)に結び付けているところが最大の魅力であろう。
永久保貴一は弱き者、虐げられる者、差別される者、はじかれる者、いわゆる「異端者」の味方なのである。