1961年松竹映画。
米国アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた評価の高い作品である。
オスカー受賞=いい映画というわけでは全然ないけれど、この映画は間違いなく傑作である。
主演の高峰秀子の演技は、伝説的名女優・田中絹代ばりのリアリティと集中力の域に達していて、これまでに見た高峰秀子の作品の中では文句なく最高級の賛辞に値する。十代の小作人の生娘から、孫を腕に抱く白髪・皺まじりの老けこんだ地主の奥様までを、昭和期の5つの時代を5幕仕立てで描く構成の妙を天才的勘と知性とでのみこんで、歳ふるとともに変わってゆく女の姿と、何十年という歳月を経てもなお変わらない女心とを、ものの見事に演じ切っている。
人々の愛憎を悠然と眺める阿蘇の雄大な風景も効果的。日本の農村の因習に満ちた土着文化の息苦しさや忌まわしさ--横溝正史のミステリーに代表されるような--を、のびやかな空間でもって解放している。
監督の実弟である木下忠司の音楽も素晴らしい。暗く陰惨になりがちなストーリーを、フラメンコという異質なものをかけ合わせることでラテン的に救い上げ、一方で情熱と哀愁に満ちたギターとカスタネットの調べが、「生娘だった自分を無理やり犯し、好きな男との間を切り裂いた憎き男(=仲代達矢が演じている)」の妻として生き続けなければならない一人の女の悲しい物語を、国や文化を越えた‘女の一生’ドラマにまで引き揚げている。
センスが良い。
この作品を観ると、木下恵介が同時代に活躍した黒沢明にも小津安二郎にもない、あるいは現代活躍する多くの映画監督にもなかなか見られない、極めて優れたオリジナリティ(=天才性)を持っていたことが理解できる。
それは、一言でいえば、写実主義にも等しい人間の心理描写の細やかさである。
とりわけ、この作品のほか『香華』や『女の園』に見られる女の心理描写について、まるで女性作家のごとき繊細にして執拗な心の綾をたどるのに長けている。
むろん、あくまでも「女性的資質を多分に持つ男性作家が想像する女性の心理」の域はどうしたって出ることは叶わないものの・・・。
日本が生んだ偉大なる‘ゲイ’術家の一人であることは、もはや疑いようがない。
今後ますます国際的な評価は高まるものと推測される。
「永遠の人」とは木下自身である。
評価:A-
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!
米国アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた評価の高い作品である。
オスカー受賞=いい映画というわけでは全然ないけれど、この映画は間違いなく傑作である。
主演の高峰秀子の演技は、伝説的名女優・田中絹代ばりのリアリティと集中力の域に達していて、これまでに見た高峰秀子の作品の中では文句なく最高級の賛辞に値する。十代の小作人の生娘から、孫を腕に抱く白髪・皺まじりの老けこんだ地主の奥様までを、昭和期の5つの時代を5幕仕立てで描く構成の妙を天才的勘と知性とでのみこんで、歳ふるとともに変わってゆく女の姿と、何十年という歳月を経てもなお変わらない女心とを、ものの見事に演じ切っている。
人々の愛憎を悠然と眺める阿蘇の雄大な風景も効果的。日本の農村の因習に満ちた土着文化の息苦しさや忌まわしさ--横溝正史のミステリーに代表されるような--を、のびやかな空間でもって解放している。
監督の実弟である木下忠司の音楽も素晴らしい。暗く陰惨になりがちなストーリーを、フラメンコという異質なものをかけ合わせることでラテン的に救い上げ、一方で情熱と哀愁に満ちたギターとカスタネットの調べが、「生娘だった自分を無理やり犯し、好きな男との間を切り裂いた憎き男(=仲代達矢が演じている)」の妻として生き続けなければならない一人の女の悲しい物語を、国や文化を越えた‘女の一生’ドラマにまで引き揚げている。
センスが良い。
この作品を観ると、木下恵介が同時代に活躍した黒沢明にも小津安二郎にもない、あるいは現代活躍する多くの映画監督にもなかなか見られない、極めて優れたオリジナリティ(=天才性)を持っていたことが理解できる。
それは、一言でいえば、写実主義にも等しい人間の心理描写の細やかさである。
とりわけ、この作品のほか『香華』や『女の園』に見られる女の心理描写について、まるで女性作家のごとき繊細にして執拗な心の綾をたどるのに長けている。
むろん、あくまでも「女性的資質を多分に持つ男性作家が想像する女性の心理」の域はどうしたって出ることは叶わないものの・・・。
日本が生んだ偉大なる‘ゲイ’術家の一人であることは、もはや疑いようがない。
今後ますます国際的な評価は高まるものと推測される。
「永遠の人」とは木下自身である。
評価:A-
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!