しばらく前に職場の老人ホームのレクリエーションで、スマホを使った「虫の鳴き声クイズ」をやった。
 こんな要領である。

1. ホワイトボードに童謡「虫の声」の歌詞を書いて、みんなで一緒に歌う。
あれマツムシが 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれスズムシも 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ

きりきりきりきり コオロギや(キリギリス)
がちゃがちゃ がちゃがちゃ クツワムシ
あとからウマオイ おいついて
ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ

2. ネットの虫の音WORLDというホームページを開いて、歌詞に出てくる5種類の虫たち(松虫、鈴虫、こおろぎ、くつわ虫、馬おい)の鳴き声を、一つ一つ正体を明かさずに再生する。

3. どの虫かを当ててもらう。

 やってみて実感するのは、上記の歌詞が実によく出来ているってことだ。
 それぞれの虫の鳴き声を見事に擬音語に変換している。
 松虫は、チンチロリン、チンチロリン、と聞こえる。
 くつわ虫は、ガチャガチャッガチャガチャ、と喧しい。
 参加された老人たちは、ほぼ間違いなく答え、コンクリートの室内に響く秋の虫の音を楽しんで、しばし風流にひたった。
 ちなみに、2番の歌詞の冒頭は、「きりきりきりきり キリギリス」が本来だったらしい。
 が、キリギリスは「きりきり」とは鳴かない。「ジージー」と蝉のように鳴く。
 昔は、コオロギのことをキリギリスと読んでいたそうな。
 だから、調子よく韻を踏んで歌えたのである。
 でも今は、言葉の面白さよりも科学的正確さを優先し、「きりきりきりきり コオロギや」と子供たちには教えているようである。
 (といったトリビアも紹介して場を盛り上げる)

 さて、ここで面白いことを発見した。
 ウマオイの鳴き声をスマホの最大音量で再生したところ、あれ不思議やな、全員が「何も聞こえない」と言うのである。何度くり返しても、ひとりひとり耳の近くにスマホを持っていっても同じであった。

 なんと、老人にはウマオイの鳴き声「スイッチョン、スイッチョン」が聞こえないのである。

 人間は年をとると、一般に、高い音から聞こえなくなってくる。
 老人性難聴と言う。
 これを利用して、騒ぐ若者たちを夜の公園から追っ払うために、モスキート音(蚊の羽音のような高い周波数の不快な音、若者にのみ聞こえる)を発する機械を公園に設置した自治体のニュースがちょっと前にあった。(その後どうなっているのやら・・・)
 You Tubeの「耳年齢診断」という動画によると、
 
 10000ヘルツが聞き取れる  →60歳以下の聴力
 12000ヘルツが聞き取れる  →50歳以下の聴力
 15000ヘルツが聞き取れる  →40歳以下の聴力
 16000ヘルツが聞き取れる  →30歳以下の聴力
 17000ヘルツが聞き取れる  →25歳以下の聴力
 19000ヘルツが聞き取れる  →20歳以下の聴力 
 
 モスキート音は17000ヘルツ前後、すなわち25歳以下の若者がターゲットになっていることになる。
 自分は15000までは聞き取れたが、16000は無音であった。
 つまり、30代の聴力ってことだ。
 ビックリ!(実年齢は50代)
 おそらく、若い時分からウォークマンの類いはほとんど使用しなかった。大音量で音楽を聴く・ゲームをする習慣もなかった。騒音が嫌いなのでパチンコ屋にもゲーセンにもディスコ(クラブ)にもめった行かなかった。自然と耳に負担をかけない生活を送っていたのが良かったのだろう。
 そのぶん、目に負担が来てしまったわけだが・・・。

 で、虫の鳴き声の周波数を調べてみた。
 マツムシ  3300ヘルツ
 スズムシ  4000ヘルツ
 コオロギ  5000ヘルツ
 クツワムシ 8000ヘルツ
 ここまでは高齢者でも何とか聞き取れる。(クツワムシは聞こえる人と聞こえない人とに別れた)
 
 問題のウマオイだが・・・
 
 13000ヘルツ!
 高い! 
 
 50代で聞き取れなくなるレベルなのである。(もちろん個人差あり)
 レクの参加者はみな介護保険の被保険者となる65歳以上なので、当然ウマオイは聞こえるべくもない。
 彼らにとって、ウマオイはこの世から絶滅したも同然なのであった。
 いずれそう遠くない日、自分の世界からもウマオイは絶滅するのだろう。今のうちにじっくり味わっておこう。

 ときに、スズムシの鳴き声は電話では聞こえない、というのは有名な話である。
 電話でキャッチできる音の周波数は300~3400ヘルツなので、4000ヘルツのスズムシの鳴き声はカットされてしまうのである。
 だが、上記の通り、スズムシどころか秋の虫たちはほとんど電話に出てくれないのである。