とき  2016年1月31日(日)
ところ 和光市市民文化センター・サンアゼリア大ホール(埼玉県)
演目
1. 歌劇『オイリアンテ』序曲(カール・マリア・フォン・ウェーバー)
2. 交響曲第4番変ロ長調(ベートーヴェン)
3. ピアノ協奏曲第1番変ロ短調(チャイコフスキー)
4. アンコール ピアノ協奏曲(モーツァルト)第20番第2楽章
演奏者
指揮 大市泰範
ピアノ 大村麗
楽団 アリエッタ交響楽団

 アリエッタ交響楽団は2012年に設立されたアマチュア・オーケストラで、若手の音楽家に‘協奏曲’という形で演奏の場を提供することを目的としている。アリエッタとはイタリア語で「小さな歌」「そよ風」の意味がある。

 和光市は昔は畑と工場ばかりだった。
 学生時代、通学で東武東上線を利用していたが、東京都板橋区にある成増駅の一つ隣りが和光市駅で、「さあここから埼玉県だぞ」という感覚を、窓外に広がる畑からも車内の乗客の醸し出す空気感からも感じとったものである。たしか駅の近くにゴルフの練習場があった覚えがある。
 まず積極的に下車したい理由の見当たらない駅(町)であった。和光市に住んでいた友人を訪ねに2、3回降りたくらいだったか。
 今回、和光市市民文化センター・サンアゼリアに行くために、数十年ぶりに和光市駅に降り立ち、駅周辺の変貌に驚いた。
 こじゃれている。
 妙に活気がある。
 家族連れがやけに多い。
 
 調べてみると、ここ数年の和光市の人口増加率は埼玉県1位(全国でもトップ10に入る)、平均年齢39.61歳は同じ県内の戸田市と並んで全国で若い市町村トップ20にランクインする。(日本☆地域番付より)
 和光市はまた、自分(ソルティ)の仕事である介護分野においても、「和光モデル」と呼ばれるほどの先進的・効果的な介護予防の取り組みを市を挙げて実践し、全国的に話題になっている。2014年5月にはNHKの『クローズアップ現代』で紹介されたほどである。
 今やアゲアゲの町なのだ!
 
 駅から歩いて15分ほどのサンアゼリアに向かう途中、反対方向から駅に向かってくる人の波が途切れることない。カップルや家族連れが多い。
 なんだろう?
 サッカーの試合でもあったのか?
 道標に従って道を折れると、そこはお祭り騒ぎであった。
 屋台がずっと立ち並んで、人でごった返している。
 子供たちの歓声が冬の青い空に放たれている。

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 人波を掻き分けるようにして進むと、正体が分かった。
 サンアゼリアと和光市役所にはさまれた広場で、和光市商工会主催「ニッポン全国鍋グランプリ2016」が開かれていたのである。SKE48メンバーも参加していたらしい。
 やっぱ、アゲでしょ?
 
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 人ごみの中、サンアゼリア大ホールに入る。
 6~7割がた埋まっている。思ったより入っている。
 が、そこは埼玉県和光市らしく、「買い物途中で寄ってみました」といった感じの普段着の人々が目立つ。ある意味、クラシックコンサートらしくない雰囲気である。全席自由入場料500円という敷居の低さも影響しているのだろう。

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 演奏は可もなく不可もなくといった印象であった。
 ベートーヴェンの交響曲第4番は全体をしっかり聴いたのはこれがはじめてであったが、結構気に入った。3番『英雄』よりこっちのほうが陰影や柔弱さがあって自分向き。ちょっと、モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』を思わせる曲調である。
 
 何よりかにより、ホールの音響がいい!
 自分もこれまでいろいろなコンサートホールに足を運んできたが、おそらく今までで一番いい!
 クリアで立体的で新鮮な響きが体全体で味わえる。
 というか、ホールの響きの差というのをこれまであまり意識してこなかったことに、はじめて気づかされた。
 でも、そうだ。
 あたりまえじゃないか。
 ホールもまた一つの楽器なのだ。
 一番大きくて、おそらく一番重要な・・・。
 
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 クライマックスはチャイコフスキーの超有名なピアノ協奏曲。
 発表当初「演奏不可能」と言われたほどに難しいピアニストの指捌きと、チャイ子の圧倒的にゴージャスでドラマティックな調べに、心ごと持っていかれた。(釜グランプリはチャイコフスキーに決定!)
 
 80年代末、バブル華やかなりし頃、海外から次々とやって来る有名オペラ劇場の公演を、人々は何万円(ものによっては何十万円)もの入場料を惜しみなく払って聴きあさった。ブランドもののスーツやドレスを身にまとって、幕間にはワイングラス片手に身につかない寸評合戦などしていたものである。「やっぱり、オテロはドミンゴに限るねえ~」とか。
 それを豊かさと勘違いしていた。
 しかし、本当の豊かさとは、少なくとも文化の浸透とは、無名だけれどそこそこ聴かせるレベルの地域馴染みのオーケストラの公演を、学生でも退職者でも一食抜けば気軽に行けるような安い料金設定で、普段着で気軽に楽しめる、そんな環境が身近なところにあることだと思う。
 バブル崩壊から25年。
 日本もやっとそういう時代になったんだなあ~。
 
 和光市駅に降り立つことがこれから増えそうな予感がする。