日時 5月25日(水)
天候 くもり一時小雨
行程
6:57 秋葉原駅発(つくばエクスプレス快速)
7:47 つくば駅着
8:00 つくばセンター発(筑波山シャトルバス)
8:40 筑波山神社入口着
9:00 歩行スタート
10:30 弁慶七戻り
11:00 女体山頂
11:40 御幸ヶ原
11:50 男体山頂
12:00 御幸ヶ原で昼食
12:40 山頂駅(ケーブルカー乗車)
12:50 宮脇駅(下車)
13:10 筑波山温泉・つくば湯
    歩行終了
所要時間 4時間10分(歩行3時間+ケーブルカー10分+休憩1時間)
最大標高差 617m(筑波山神社入口~女体山頂上)

 筑波山に登るのは初めて。
 「遠~い」というイメージがあったのが理由の一つ。
 2005年8月に「つくばエクスプレス」が開通するまで筑波一帯は陸の孤島であった。
 手元にある2003年刊行『関東周辺 週末山歩き』(成美堂出版)の筑波山のページを見ると、次のような経路が紹介されている。
 ①常磐線 上野駅~土浦駅(特急42分、2570円) 
 ②関東鉄道バス 土浦駅~筑波駅(50分、890円)
 ③関東鉄道バス 筑波駅~筑波山神社(12分、220円)

 この「筑波駅」というのは今あるエクスプレス「つくば駅」ではなくて、1987年に廃止された筑波鉄道筑波線「筑波駅」のことである。この駅は筑波山の南の麓にあった。現在その跡地は関東鉄道バスの営業所兼停留所となっている。
 1987年~2005年の18年間、都心(上野駅)から筑波山登山口に行くには2回の乗換えを要し、待ち時間を含めると優に2時間はかかったのである。料金は2003年当時3680円。
 今回ソルティが利用した経路だと、都心(秋葉原)から乗換え1回きりで約1時間半で筑波山登山口に到着する。料金は1900円。
 エクスプレス開通がどれだけ筑波山へのアクセスを高めたか、どれだけ多くの人が筑波山に押しかけるようになったかが分かろうものである。
 なので、ここ10年に限って言えば、筑波山になかなか足が向かなかった理由は「遠~い」とは別にある。
 実は、筑波山は殺人事件が多発しているのである。事件現場というよりも死体遺棄の場所として活用されているようだ。
 古くから神の山として崇敬され、国土を作りしイザナギ・イザナミが祀られている霊験著しい明神大社を擁し、百名山の一つとして富士山とならび称される名峰。昨今はパワースポットとしても人気が高い。
 そんな筑波山に死体遺棄するとはなんて罰当たりな連中だろう!
 神様がカンカンに怒っているのではないか?
 神域を汚す者に天罰が下るのではないか?
 いや、そもそも神様はいい加減人間を見放して、もう筑波を去ったのではないか?

 そんなことを思っていたので登る気にならなかった。不吉な‘気’が山中に漂っているような感じがして、リフレッシュにならないと感じたのである。
 しかるに、ここ一年くらい何となく筑波山が気になっていた。行かなくてはいけないような気がしていた。
 
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 行くなら梅雨入り前の平日だ。
 
 生まれてはじめて「つくばエクスプレス」に乗車した。
 

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 つくば駅からの筑波山シャトルバス第一便は空席が多かった。
 55号線を筑波大学――ここも都心から通勤圏内になったわけである。かつて学生は寮生活を強いられたものだ――を左に見送りながらスイスイ進んでゆくと、北関東らしい田園風景が広がり、前方右手に筑波山が威容を顕わす。これまでにソルティが登った百を越える山々のピークから、いつも西の眼下に広がる関東平野の彼方にすくっと一つだけ聳える、二つの峰を持つなだらかな山――それが筑波山であった。
 ついにまみえるときが来た。

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 山腹にある筑波山神社入口でバスを降りた瞬間から草いきれが鼻腔を覆う。
 やっぱり都心とは空気が違う。身体の浄化が始まり出す。
 青々とした苗に覆われた水田風景が郷愁をそそる。 
 大鳥居をくぐって、いざ出発!

女体山から

 
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 天気予報では「降水確率7%、曇りのち晴れ」だった。が、空が暗くなってぽつぽつと雨が落ちてきた。天候を味方につける効果が期待できる慈悲の瞑想を行う。
 これで大丈夫だろう。
 
 朝の筑波山神社は清新な‘気’につつまれていた。
 境内にある樹齢800年・樹高32メートルの大杉はまさに名木。
 登山の無事を祈り、おみくじをひく。

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筑波山おみくじ 001


 拝殿の右手から女体山への登り道「白雲橋コース」が始まる。
 すぐに薄暗いが気持ちいい杉木立の道に入る。歩きやすい石段の道は山道というよりも参道に近い。登山客は少なく、森の中は清浄な‘気’に満ちている。高度が上って雑木林が光を乱反射するようになると、‘気’のパワーはどんどん高まってゆく。
 なるほど聖なる山というだけのことはある。
 神様は逃げていない。あるいは、戻ってきている。
 

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 ほとんど疲れを感じることなく、息切れもせず、尾根に到達。
 別の登山路から登ってきた遠足の小学生と合流。3年生くらいか。
 「ああ、つかれた。せんせい~、にょたい(女体)ここ?」
 「にょたい、まだ~?」
 などと口々に無邪気に叫んでいるのが面白い。いやらしさなど微塵もなく。
 
 ここから山頂までは、巨岩・奇岩の続く楽しいアスレチック。
 

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 弁慶七戻り(べんけいななもどり)・・・・・弁慶も通るを恐がったとか


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 母の胎内くぐり(ははのたいないくぐり)・・・・・新しく生まれ変われるという


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 北斗岩(ほくといわ)・・・・・北斗とは北極星のこと


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 大仏岩・・・・・確かに座禅している大仏の後姿そのもの

 
 急な岩場を一踏ん張りで、女体山頂に達する。
 間違いなく誰もが驚き、誰もが息を呑む絶景である。
 今日はあいにくの曇り空だが、空気の澄んだ快晴の日には圧倒的な見晴らしに言葉を失うことであろう。
 山頂は崖に突き出した岩場。それほど広くもなく、足場も良くない。
 強い風が吹く中、山頂の突端に立つのは勇気かさもなくば愚かさが要る。
「おとうさん、やめてよ! 歳なんだから調子に乗らないで。」
 七十代の男が、妻に怒られている姿が面白かった。
 ここで悪ふざけや自信過剰は禁物。筑波山に遺体をまた一つ増やすことになる。

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  女体山から見る男体山


 女体山から男体山に向かう道は、杉やぶなの巨木が並ぶ、目に鮮やか心に爽やかな快適な下り坂。ここらでケーブルカー経由の登山客の姿が多くなる。


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その名も‘紫峰’と名づけられた杉の巨木(高さ約40m、幹周り約7m、樹齢800年)

 
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 ブナだって負けちゃいない
 

 ケーブルカー山頂駅のある御幸ヶ原は、みやげ屋さんの立ち並ぶ観光地然とした大きな台地。遠足の小学生や中学生が弁当を広げたり、キャッキャッとおみやげ買いにはしゃいでいた。
 その光景を見ていて、はっと記憶が蘇った。
「ここには来たことがある! 遠足か林間学校で!」
  とすると40年前くらいか。
 本当に人は忘れるものである。(ソルティの場合、記憶に残らない理由もある)
 

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 10分ほどの登りで男体山頂へ到着。

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 男体山から見た女体山
 

 御幸ヶ原に戻ってベンチで昼ごはんを食べていると、空が暗くなって冷たい風が吹いてきた。
 一雨来そうな気配。
 慈悲の瞑想の効果もここまでか・・・。
 下りはケーブルカーを利用する。登りより下りのほうが膝も腰も痛めやすいのである。明日も介護の仕事が待っている。

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 筑波神社から15分ほど歩いたところにある「筑波温泉つくば湯」に行く。
 内風呂、露天風呂、サウナ、ジャグジーなどがある緑に囲まれた温泉。
 1時間近く男湯を独り占めできた。
 露天風呂からは女体が――もとい女体山が良く見えた。

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 温泉から帰りのバス停まで季節の花の咲く里山の道、筑波の麗しい山影を眺めながら思った。

 自分が長らく筑波山を敬遠していたのは、もしかすると「遠~い」からでも「不吉だ」からでもなく、ここが‘男と女’の対の神様を祀っているからなのかもしれない。男女和合、夫唱婦随を高らかに顕彰する‘ヘテロ社会の象徴のような山’なのだ。ゲイである自分は「お呼びでない」と無意識に感じていたのかもしれない。反発していたのかもしれない。
 では、今なぜ「呼ばれた」のか?
 半世紀たってようやく自分の中の両性(男性性と女性性)が和合したのだろうか?
 あるいは、歳をとって、男とか女とかジェンダーとかセクシュアリティとか性にまつわる事々が、「どうでも良くなってきた」からなのかもしれない。
 解脱も近い 

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