2013年アメリカ(製作ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ)

 遅ればせながら、2014年に日本で主題歌ともども大ヒットしたアニメを鑑賞。
 ブーム真っ只中の時は乗りたくないという昔からのソルティの天邪鬼ゆえである。おかげでリアルタイムの話題にいつもついていけない。
 どうでもいいか。

 アニメだから、ディズニーだから、と馬鹿にしていたわけではないが、予想外に面白かった。
 子供たちを楽しませる分かりやすいストーリー、マジカルでビューティフルでファンタジーな映像、ユニークな脇のキャラクター(雪だるまのオラフ)、ミュージカルとして舞台にかけても十分通用するであろう高レベルの音楽表現・・・。
 さすがディズニーである。
 
 ソルティが「面白いな」と思ったのは、この物語はもともとアンデルセン童話『雪の女王』が下敷きになっていて、少年と少女の友情物語なわけである。それがエルサ(雪の女王)とアナの姉妹愛の物語に転換されている点がまず一つのポイント。
 姉妹愛の物語って考えてみると、あまりないのである。『若草物語』くらいしか思い浮かばん。『細雪』は姉妹愛とはちょっと違うしな。
 えっ、『美徳の不幸』? 
 ・・・・・。
 とりわけ、この物語のように妹が自分の命を犠牲にして姉を助けるといった話は聞いたことがない。
 姉エルサの魔力で全身が凍りついてしまったアナを救うには、「真実の愛の接吻」が要る。この仕掛けは、同じくディズニー映画になっている童話『眠れる森の美女』や『白雪姫』と変わりない。少女が夢見る「白馬に乗った王子様のキス」という永遠にして凡庸なファンタジーである。「壁ドン」はそのヴァリエーションだろう。
(むろん最後には、アナを本当に愛している勇敢な山男クリストフの熱いキスが、アナの氷を溶かし蘇らせるのだろう。二人はめでたく結ばれるのだろう。)
と、タカをくくって観ていた。(だってディズニーだもん。)
 が、アナを救ったのは恋人ではなかった。男ではなかった。
 姉に対する自らの「真実の愛」だったのである。
 自分で自分を救ったのだ。
 ここが新鮮で面白い。
 「もう少女たちには、救ってくれる男なんて必要ありません」という、ある意味フェミニズム的な匂いがしたのである。
 そう、アナの性格はまさに、従来のディズニー的な夢見る少女、魔法使いや王子様が現れて窮地を救ってくれるのをただ待っているだけの女性とは違っている。自分の手で人生を切り開いていく気概と勇気にあふれている。
 エルサもまた同様に男を必要としていない。魔法使いであることを隠して自分自身を閉じ込めて生きてきたエルサは、自らに備わった特別なパワーを恐れ、それがバレることで起こる周囲からの攻撃に怯えている。が、全国民を前にした戴冠式の日に、あっけなく正体がばれてしまう。パニックになって山奥に逃避するエルサ。
 ここで有名な「レリゴー(Let It Go)」が歌われる。
 観る者は「おやっ?」と思うのだ。
 エルサの気持ちを想像するに、自分の正体がばれたこと、周囲から「モンスター」と恐れられたこと、妹と決別したこと、女王の座を失ったこと、国を捨てて孤独に生きざるをえなくなったこと、そんな宿命を背負うよう生まれついたこと・・・等々を、哀しみ、怒り、嘆き、呪い、恥じているのではないかと普通なら考える。共同体から追放されるあぶれ者(男が多い)を描く従来の物語であれば、それが普通だろう。
 だが、エルサが歌に籠めるのは、世間体から解放された自由であり、「ありのままの」自分自身を何の遠慮なく生きることができる喜びであり、自らのパワーを思いのままに発揮できる高揚感なのである。
 やっぱり、フェミニズムっぽい。
 同年(2013年)に公開された『かぐや姫の物語』とくらべると、主人公の女性たちのベクトルが正反対であることに思い至る。かぐや姫は、山の中で男女の別なく自由奔放に育った楽しい幼年時代を捨てて、世間体と窮屈なしきたりや習慣に支配される貴族社会(=男社会)に身を置くことになり、自らのパワーを押し殺していった。嫁ぐべき男を選ばなくてはならない羽目に陥ったわけである。
 どっちの映画のほうが、現代の女性観客に受けるかといったら、それはもう言うまでもない。
 
 昨今のディズニーがこんなにフェミニズムだなんてびっくりした。
 まあ、そうでもなければ、女性たちにそっぽを向かれるだろう。 


評価:B-


A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!