1943年松竹。

 木下監督のデビュー作。30歳の時の作品である。
 同じ年に世界のクロサワが『姿三四郎』でデビューしている。
 まさに奇跡の年だったのだ。
 
 どうってことのないコメディ映画なのであるが、新人のデビュー作とはやはり思えない。東山千栄子、小沢栄太郎、上原謙、水戸光子、笠智衆、東野英治郎、坂本武といった並み居るベテラン役者、人気役者を見事に使いこなしている。カメラワークも達者。テンポも絶妙。
 この翌年に世界映画史上まれに見る傑作反戦映画『陸軍』を撮っていることを思えば、木下は映画監督としては早熟の天才タイプだったのだろう。
 黒澤明に比べると、扱うテーマが日常を舞台とした恋愛や友情や家族ドラマなど地味なものが多かったためもあってか、現在に至るまで世界的には知名度も評価も低い。
 しかし、こと女性を描く力量に関して言えば、黒澤明は木下恵介の足元にも及ばない。木下作品に登場する女性たちのリアル感から見ると、黒澤作品の女性たちはまるで書割りである。『陸軍』の田中絹代、『華香』の岡田茉莉子と乙羽信子、『女の園』の高峰三枝子、『永遠の人』の高峰秀子を観れば、現代にも通用する木下のフェミニズムに賛嘆の念を禁じえない。

 黒澤明の作品が今以上に深く理解されることも高く評価されることもないであろう。
 が、木下恵介の作品は、これからますます理解される度を深めてゆくであろうし、それにつれて評価も高まってゆくであろうことは想像に難くない。
 むろん、自分は木下派である。


評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!