2015年オーストラリア映画。

 Infiniはフランス語で「無限」の意。「アンフィニ」と読むのが正しかろう。
 謎のウィルス――感染した人間たちの獣性を引き出して互いに殺し合いをさせる――が蔓延した惑星インフィニに降り立ったクルーの運命を描いたSFスリラー。
 人間の隠された獣性を引き出して‘朱血肉林’の凄惨な殺戮シーンを現出させるという点では、すでに伝説的なB級オカルトスプラッタSF『イベント・ホライズン』(ポール・アンダーソン監督、1997年)を思わせる。あのグロテスク極まる映画の前日譚がこの作品ではないかと思うほどの地獄絵図が展開される。
 最後には、獣性と対峙する人間の聖性(=愛)が勝利をおさめ、謎のウイルス自身の持つ奇跡的な能力によって、死んだはずのクルー全員が生き返り、無事地球への帰還を果たす。
 ――という、なんとも安直でご都合主義のハッピーエンド。
 気が抜けた。
 
 一つ面白いなと思ったのは、人間を遠くの惑星まで瞬時に転送させる「スリップストリーム」という未来社会の革新的技術。これで、大宇宙をスペースシップに乗って危険な航行する必要も、苦しい物理法則を駆使してA地点からB地点へワープする必要もなくなった。制作サイドからすれば、物語を一気に核心であるインフィニに進めることができるし、スペースシップがらみの手間のかかるシーンを撮る必要がないので予算も削減できる。ご都合主義もここまで来れば、かえってどうでもよくなる。
 この夢のような驚異的技術を使って未来社会の人類がやっているのは、膨大な数の低所得者を他惑星に派遣して地球のエネルギー源を開発・転送させる3K(危険・きつい・気違い沙汰)仕事。いわば、大宇宙を舞台にした炭鉱堀り。
 スリップストリームという技術自体の不安定性(=危険度)に加え、地球とはまったく環境の異なる未知の惑星でのストレスフルな仕事。命懸けと言えばカッコいいが、例えてみれば、廃炉になった福島第一原発で残っているウランを取り出す作業のようなもの。
 なぜ未曾有の科学力を全人類が幸福になる方向に使えないのか?
 
 ああ、そうか。人類の愚かさの無限(アンフィニ)を揶揄しているのか。


評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!