2015年文藝春秋発行。

 第153回芥川賞受賞作。
 
 二人の漫才師の子弟譚であり友情譚である。
 「漫才とは何か、お笑いとは何かを追求する芸道小説」「お笑いに情熱を燃やす若者の夢と挫折を書いた青春小説」「自意識の強い一人の青年の‘世界’との出会いを書いた成長物語」と、いろいろな読み方ができると思うが、ソルティ的には「お笑いを媒介とした二人の男の友情譚」という部分が一番面白かった。
 すなわち、一人の真面目で不器用で思索的な青年が、一人の破天荒で不器用で動物的な「あほんだら」に出会って、惹かれ、感化を受け、己を発見し、他者を発見し、人生の一面を知っていく物語――である。ある意味、二人の関係は恋愛に近いと思う。個人的には、二人の年齢差(四つ)をもっと(少なくとも一回りくらい)開いたほうが関係に深みが出たんじゃないかという気がする。
 「これは芥川賞に値するのか? いや、そもそも芥川賞がなんぼのもん?」ということはおいといて、又吉直樹が明らかに小説家の目を持っているのは確かである。