小春日和の一日、前から気になっていた多磨全生園に出かけた。
 かつてここは、ハンセン病患者の隔離収容施設であった。

 
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 西武池袋線の清瀬駅からバスで10分ほどで「全生園前」に到着。
 正門がすぐ目に入る。
 
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  •  所在地  東京都東村山市青葉町4-1-1
  •  創立   1909(明治42)年9月28日
  •  敷地面積 358,116㎡(東京ドーム7.6個分)

 施設に付属する国立ハンセン病資料館には数年前に行った。そのときは、患者らが住んでいる全生園の中まで一般人が入れるとは知らなかった。
 だが、1996年4月1日、90年に及ぶ隔離政策の根拠であった悪法「らい予防法」が廃止され、園の内外出入り自由になったのである。今では、花見の季節には全生園の名高い桜並木に近隣の人々が群れをなしてやって来る。園内には民間の保育所もある。収容されていた患者(元患者というべきだろう)も何十年ぶりかに自由に外に行けるようになった。それを題材に撮ったのが、ドリアン助川原作、樹木希林、永瀬正敏、市原悦子出演の映画『あん』である。映画の中に全生園の光景が出てくる。
 はからずも、‘聖地’巡礼となったわけである。


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 国立ハンセン病資料館
 
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 四国遍路するハンセン病の親子(『砂の器』を思い出す)

 
 門には扉も無く、警備員も立っていない。園内を歩いていても誰にも誰何されない。
 というか、平日の昼間だというのに、日曜のような静かさと人けの無さである。今も暮らしている元患者がいて、その人たちのケアをする医療スタッフも働いているはずなのに、何という人口密度の低さであろう。(もしかして都内でも十指に入るのでは?)
 園内には、入所者たちが丹精込めて育てた桜、梅、竹、杉、ケヤキ、椿、ツツジ、イチョウなどが生い茂っている。紅葉も盛りに近づいて、ひっきりなしに車が往来する外の騒がしさとは別世界が広がっていた。
 

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全生園の自然

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この風景、子供の頃によく見た!!
 

入所者の生活

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住居地区は立ち入り禁止

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高齢者向けの商品が多い

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公衆浴場

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園内のあちこちに設置された電話ボックス(緊急時の連絡先が掲示されている)


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テニスコートと野球場(かつてはずいぶんスポーツが盛んだった)

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遺 構

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若い男性患者らが暮らしていた寮(もみじは近隣の小学生が植えたもの)

 
信 仰

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永代神社

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弘法大師はハンセン病で亡くなったという説もある

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日蓮宗会堂

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秋津教会


望 郷

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入所者たちはこの丘に登って故郷を偲んだ

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開園以来の物故者は4,168人(平成27年10月現在)

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倶会一所くえいっしょ)とは
 阿弥陀仏の極楽浄土に往生したものは
浄土の仏・菩薩たちと
一処で出会うことができるという意


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尊厳回復の碑(やっぱり生きているうちに回復するのが正解) 


 園内にあるお食事処「なごみ」で遅い昼食をとった。
 とり五目釜めし(1300円)。
 炊き立てでホカホカ、ボリュームあって、美味しくて、大満足。

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見よ!この具だくさんの釜!


 2014年5月現在、全国の国立ハンセン病療養所(13箇所)の入所者数は1,840人、平均年齢 83.6歳である。そう長い先でもなく、療養所はその役目を終えるであろう。

 約3時間ぐるりと歩き回って、森林浴し、紅葉を愛で、鳥のさえずりを聴き、入所者の生活や思いに触れ、旨いものを食べ、まことに有意義な散策であった。
 
 今度は桜の頃に来ようっと。


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