日時 2016年12月3日(土)18:00~
会場 杉並公会堂大ホール
曲目
  • モーツァルト/交響曲第32番 ト長調 K..318
  • ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
  • ブラームス/交響曲第3番 ヘ長調 Op.90
  • アンコール バッハ/無伴奏ヴァイオリン パルティータ第3番 BWV1006 第3曲 ガヴォットとロンド
ヴァイオリン:奥うらら(ハノーファー州立歌劇場・コンサートマスター)
指揮:重原孝臣
入場無料

 ギュンターフィルハーモニー管弦楽団は、1980年ウィーン・フィルのホルン奏者ギュンター・ヘグナー氏との協演を機に結成されたオケで、ウィーンの音楽、ウィーンの響きをこよなく愛する人々の集まりとのこと。これまでの演奏会プログラムを見ても、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、シューベルトなど、ウィーンとゆかりの深い古典派の曲が圧倒的に多い。
 団員の平均年齢はOBオケと並ぶくらい高めである。
 が、音はぜんぜん違った。
 OBオケのほうは分厚くて粘りある「スライム風」であるが、こちらは精巧できらびやかなガラス細工のお城のような典雅で華奢な音である。これが「ウィーンの響き」というやつなのだろうか。
 OBオケ同様、演奏には安定感があり、大人っぽい落ち着きがある。
 演奏後の挨拶で、昨年89歳の団員が引退したとか言っていた。オケは長く楽しめる道楽なのだな。うらやましい。
 
 今回の協演者である奥うららは、5歳からヴァイオリンをはじめ、東京芸術大学音楽学部を卒業。ドイツのヒルデスハイム市立劇場およびハノーバー国立歌劇場のオーケストラ団員(コンサートマスター)として活躍してきた。アンコール前のご本人の弁によると、「音楽好きの母親あって今の自分がある」。五嶋みどりを思わせる。
 金色のラメのドレスを着ていたせいもあると思うのだが、その演奏はあたかも、ヴァイオリンから放たれた音が金色に輝くリボンとなり、波打ちながら空間を伸びてきて、蜂蜜のような甘い香りをしたたらせながら、聴く者の身体に柔らかく巻きつくかのようであった。特に、ヴァイオリニストとしての積年の思いと母親への感謝の込められたアンコール曲は、とても素晴らしく、至福の時間を過ごさせてもらった。

 ブラームスの交響曲3番は「聴くのははじめて」と思っていたのだが、第3楽章が始まって、「ああ、知ってる!」と心の中でうなづいた。
 
「これ、ブラームスだったのか」
 
 家に帰って調べてみると、このメロディーは、1961年の米仏合作映画『Goodbye Again(さよならをもう一度)』(1961)で使用されたほか、フランク・シナトラが『Take My Love』というタイトルでポップスとしてカバーしている。ソルティは映画のほうは観ていないから、おそらくシナトラの歌を幾度も耳にしていたのだろう。
 たしかに、時代を超える印象的なメロディー、せつなさと美しさに満ちた名曲である。
 ブラームスは、尊敬する大先輩ベートーヴェンを意識しすぎて交響曲第1番を完成させるのに20年以上費やしたと言われる。第1番が傑作なのは間違いないけれど、ブラームスの本領というか、オリジナルな個性が発揮されているのはきっとこっちなんだろうな。
 これからブラームスを追って、確かめてみよう。

 杉並公会堂の正面にはブルーのクリスマスツリーが夜空に輝いていた。

杉並公会堂Xmasツリー