日時 2017年1月28日18時~
会場 新宿文化センター・大ホール
指揮 和田一樹
曲目
  • R.シュトラウス/歌劇『ばらの騎士』組曲
  • マーラー/交響曲第1番ニ長調『巨人』  

 社会福祉士国家試験の前夜であるが、「もうこの期に及んでしゃかりき知識を詰め込んでも仕方あるまい。むしろ、心身ともにリラックスしてベストの力を出せる状態を作っておくほうが得策だ」と思い、新宿まで出向いた。
 JR新宿駅から花園神社脇のゴールデン街を通って会場に向かう。
 昔ここに『三日月』というべらぼうに美味いステーキを出す飲み屋があったが、今もあるのかな? おじさん(マスター)はよもや現役ってことないよな? 30年近く前の話だ。
 新宿文化センターも久しぶり。昔ここでモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を観たなあ。二期会だったかな? エルヴィーラのアリアが良かった。すでに20年以上前の話だ。
 なんだかタイムスリップしたような感覚と共に会場入りした。
 
 リベラル・アンサンブル・オーケストラ(LEO)はこれで3回目。結構なファンである。
 前の2回は曽我大介の指揮で、なかなか良かった。
 このオケの顧問指揮者(ミュージックパートナーと言っているが)は曽我大介の弟子に当たる和田一樹である。和田一樹では聴いたことがなかった。
 和田の才能の片鱗は別のコンサートのリハーサルで垣間見る(垣間聴く)ことができた。2015年ブカレスト指揮者コンクールで準優勝するなど才能が国際的に認められている。テレビやCM等でもいろいろ露出して活躍しているらしいが、テレビを見ないソルティには関係ない。
 今回はじめて和田一樹&LEOのコンサートを聴く機会を得た。
 
 和田の才能が評判通りであることを知らしめたのが最初の『ばらの騎士』であった。
 実に素晴らしかった。
 最初から最後まで音が生きていた。賛辞のすべてはそこに尽きる。
 なかなかできることじゃない。
 上手く演奏するのはプロならもちろん、アマでもちゃんと練習しさえすればできる。
 しかし、生きた音を出すことはプロ・アマ問わず難しい。これは技術や練習だけではどうにもならない領分だからである。
 生きた音とはなにか?
 
ソルティ定義・・・・・指揮者の‘気’とオケの‘気’――両者の‘気’の絶妙なブレンドが音符にもたらす‘生命力’。むろん、あるレベルの安定した技術は前提である。

 これができるところが和田一樹のまぎれもない才能の証であり、持って生まれた資質のなせる技だろう。彼の(テレビ)タレント性もこれと関係しているのかもしれない。
 一方、その和田に見事に調教されたLEOの柔軟性も素晴らしい。フレッシュな響きはなによりの持ち味である。見事なタッグという印象を持った。
 
 このまま後半のマーラー『巨人』まで進めば凄いことになると思ったのだが、やはりそうは問屋がおろさない。
 和田もオケも持てる力を最初の『ばらの騎士』に傾注してしまったように感じた。
 おそらく、そのことは演奏している当人たちが一番よく分かっていたはずである。客席からの「ブラボー」が飛び交う中、アンコールがなかったのはそれゆえであろう。
 LEO、いいオケだと思うが、そろそろ練習回数を含めたマネジメントをしっかりする時期に来ているのではないかな?
 余計なお世話か。