2010年発表。
2013年ハヤカワ文庫。
近所の古本屋で100円で購入した。
本についている帯によると、「ミステリーが読みたい!」(早川書房)、「このミステリーがすごい!」(宝島社)、「週刊文春ミステリーベスト10」において軒並み第1位を獲得したとのこと。2013年には上川隆也主演で舞台を日本に移して映画化されたらしい(ソルティ未見)。
小説として面白い。
小口の厚さ25ミリ、500ページに及ぶ長編であるに関わらず、3日で読了した。
ストリーテーリングの上手さ、簡潔にして的確な情景描写、会話の面白さ、エロティックな味付けなど、サービス精神が十二分に発揮されている。著者は、映画、出版、ファッション、ポルノ業界などでキャリアを積んだ後、この作品で作家デビューしたそうで、これまでの人生経験、職業経験が生かされているのが伺える。
小口の厚さ25ミリ、500ページに及ぶ長編であるに関わらず、3日で読了した。
ストリーテーリングの上手さ、簡潔にして的確な情景描写、会話の面白さ、エロティックな味付けなど、サービス精神が十二分に発揮されている。著者は、映画、出版、ファッション、ポルノ業界などでキャリアを積んだ後、この作品で作家デビューしたそうで、これまでの人生経験、職業経験が生かされているのが伺える。
娯楽小説として、読んで損はない。十分な退屈しのぎになる。
しかし、ミステリーとしてどうかと言うと、あまりいい出来ではない。タイトルそのままに‘二流’である。
話の構造自体にどうにも腑に落ちない欠陥がある。
ここからはネタばらしになる。
このミステリーの構造は次のように整理できる。
- A・B・C・Dの4人の女性を独特なる残虐な方法で殺害し、現在収監中の死刑囚ダリアンは、語り手である‘二流小説家’ハリーに手紙を出す。
- 内容は、「自分の熱狂的な信望者である3人の女性(もちろんシャバにいる)と会って、それぞれを主役にしたポルノ小説を自分のために書いてくれたら、自分の告白手記の執筆者にしてやる」というもの。
- ハリーは悩んだ末にダリアンと会い、‘契約’を交わし、指示のとおりに3人の女性E・F・Gと会う。
- ところが、ハリーがE・F・Gと会った直後、彼女たちはかつてダリアンがやったような残虐な方法で殺されてしまう。
- ダリアンは実は無実なのか? 真犯人はいまだ捕まっていないのか?
- いったんは警察から容疑者として目されたハリーは、解放されると自分なりに捜査を開始する。
真相はこうだ。
最初の連続殺人(ABCD)と、二番目の連続殺人(EFG)は別の人間によるものである。ダリアンは間違いなく最初の殺人の犯人であった。死刑の期日が迫るダリアンをなんとしてでも救いたいと思った真犯人Kが、自らEFGの殺人を挙行し、ダリアンの裁判のやり直しを企図したのである(監獄にいるダリアンは当然EFG殺人には関係ないから)。ただし、最初の4つの事件のうち、Dだけはダリアンの手によるものではなかった。連続殺人の一つに見せかけようと思い立ったDの夫の犯行であった。
ソルティがおかしいと思った点。
ダリアンを死刑から救いたいために、真犯人Kが別の連続殺人を行うというのは分かる。(まったく現実的な発想ではないが、ミステリーにおけるリアリティは特殊なものである。トリックとして成り立てば大方の読者は目をつぶるだろう)。
だが、そこにハリーを引っ張り込む必要はない。E・F・Gの3人を犠牲者に選ぶ必然はない。
むしろ、E・F・Gが殺されたことで、真犯人は「ダリアンとハリーの間にあった‘契約’を知っている人物」に特定されてしまう。その線で追えば、真犯人を割り出すのは赤子の手をひねるようなものだろう。(作中に出てくる捜査官は馬鹿としか思えない)
そんな危険をわざわざ冒す必要はない。最初から、まったくハリーにもダリアンにも関わりのない人間H・I・Jを選んで殺せば良い。
ダリアンを死刑から救いたいために、真犯人Kが別の連続殺人を行うというのは分かる。(まったく現実的な発想ではないが、ミステリーにおけるリアリティは特殊なものである。トリックとして成り立てば大方の読者は目をつぶるだろう)。
だが、そこにハリーを引っ張り込む必要はない。E・F・Gの3人を犠牲者に選ぶ必然はない。
むしろ、E・F・Gが殺されたことで、真犯人は「ダリアンとハリーの間にあった‘契約’を知っている人物」に特定されてしまう。その線で追えば、真犯人を割り出すのは赤子の手をひねるようなものだろう。(作中に出てくる捜査官は馬鹿としか思えない)
そんな危険をわざわざ冒す必要はない。最初から、まったくハリーにもダリアンにも関わりのない人間H・I・Jを選んで殺せば良い。
つまり、真犯人Kの殺人動機そのものは納得できても、殺人対象を選ぶ際の間抜けさが大目には見られないレベルなのだ。
もう一つおかしな点。
- EFG殺人の真相を追うハリーは、街中で誰かから狙撃される。
- その犯人は、真犯人Kではなくて、過去の事件が覆されるのを恐れたDだった。
EFGの事件が起きてしまったあとでは、すでに警察が動き出している。過去の事件との関連も問われ、再捜査されるのは時間の問題である。素人であるハリーをいまさら殺したところで(脅かしたところで)、意味はない。
Dの犯行の意図がわからん(単にハリーが憎かったから?)
ソルティにしてみれば「致命的」と思えるこうした欠陥を無視してまで、ベストテン第1位を与えてしまう審査員たち。
これまたミステリーである。
これまたミステリーである。