1977年ATG、タツミキカク製作。
  
 曽根中生(そねちゅうせい1937-2014)は、70年代に日活ロマンポルノの監督としてずいぶん気を吐いた人である。十代だったソルティは日活ロマンポルノの全盛期を知らないし、曽根監督の作品もおそらく見たことがない。どおくまん原作の『嗚呼!!花の応援団』(1976)が一番のヒット作らしいが、これも観ていない。
 神代辰巳、藤田敏八、村川透、根岸吉太郎、相米慎二、金子修介、田中登、小沼勝など、ロマンポルノ出身の映画監督には実に才能豊かなプロフェッショナルが多い。彼らは観る者に性的快楽以上に、映画的快楽を与えてくれる。むろん、体の芯まで到達し、間歇的にアクメ(絶頂)をもたらしながら、長く持続するオーガズムを約束するのは、映画的快楽である。
 曽根監督もそうしたテクニシャンの一人かもしれない。
 その上、原作は日本推理小説史上指折りの傑作と誉れ高い坂口安吾『不連続殺人事件』である。(ソルティは原作を読んだはずだが、まったく覚えていない)
 期待大で借りた。
 
 出だしはいい。夏純子の美しい裸身と憂いを含んだ表情にゾクッとする。
 画面の質感もいい。外を撮っても室内を撮っても、十分に‘映画的’な時間と空間がある。
 が、脚本が悪すぎる。
 原作どおりに、惨劇の舞台となる豪邸に一癖も二癖もある著名人や芸術家がたくさん集まるわけだが、人物整理がまったくできていない。誰が誰やら、誰と誰がどういう間柄なんだかよく分からないうちに、第一の殺人事件が起こる。誰が殺されたのかすら、よく分からない。
 と、なんの紹介もなく、どこからか刑事だか探偵だかよく分からない胡散臭い男が登場し、謎の解明に取り掛かる。
 ここまででギブアップ。始まって30分くらいか。
 これ以上見る気がしなかった。なにせ140分の長尺である。あと100分以上これが続くのかと思うと、さすがに時間がもったいなかった。
 
 なんで、こんな脚本にGOが出たんだろう?
 77年の日本映画界はまだまだ‘遊ぶ’だけの余裕があったということなのだろうか。 


評価:D+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!