2009年インド映画

 邦題の『きっと、うまくいく』は本作中のキーワード‘ Aal Izz Well ’(アール・イーズ・ウェル)を訳したもの。‘ All Is Well ’のヒンズー訛りである。原題は3 Idiots――「3バカトリオ」といったところか。
 
 2009年公開当時、インド映画歴代興行収入1位を記録し、2010年インドアカデミー賞では作品賞はじめ史上最多16部門を受賞した大ヒット話題作である。
 TSUTAYAで見つけてずっと気になっていたのであるが、なにせ上映時間171分である。ボリウッド(=インドの娯楽映画)が面白いのは『ムトウ 踊るマハラジャ』(1995)等で経験済みであるが、なかなかレンタルする踏ん切りがつかなかった。

 覚悟を決めてDVDをセットして、いったん観始めたら、最後まで退屈することなく、泣いて・笑って・浮き浮きして・ドキドキして・ハラハラして・ジンときて・しんみりして・にんまりして・すっきりして・爽やかな気分になってe.t.c.・・・・様々な感情を掻き立てられながら楽しむことができた。
 というのも、一編に詰め込まれているドラマのジャンルがヴァリエイション豊かで、まるで4~5本分の映画を観たような気になるのだ。
 基本は3人の男の友情ドラマであるが、そこに『愛と青春の旅立ち』まがいの青春ドラマあり、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』まがいのどたばたコント&ミステリーあり、『いまを生きる』まがいの‘教育を問う’テーマあり、『卒業』まがいの恋愛ドラマ(花嫁略奪)あり、『リトル・ダンサー』まがいの家族ドラマ(父と息子の確執)あり、森三中・大島美幸まがいの感動の出産シーンあり、『フォレスト・ガンプ 一期一会』まがいの人生ドラマ(不思議な青年)あり、『ER緊急救命室』まがいの救急医療ドラマあり、そして『ムトゥ 踊るマハラジャ』まがいの豪華絢爛のヒンディー舞踏もある。人間ドラマてんこもりなのだ。面白くないわけがない。ここまで来れば「まがい」ばかりなのはご愛嬌。
 これだけ多様なジャンルを、観る者をまったく混乱させることも疲れさせることも飽食させることもなく、すっきり無駄なく分かりやすくまとめている脚本がつとに優れている。成功の主因は脚本にあろう。

 昨今のアメリカ映画にしばしば見られる、設定の非現実性や難解さ、筋の複雑さ、登場人物のリアリティや生活感の欠如、人間感情の平板化などと比べると、このボリウッド映画は一昔前(70~80年代)のハリウッド娯楽映画の王道をなぞっているように思われる。親子、家族、友情、恋愛、挫折、反抗、自由、ユーモアといった価値の称揚。つまるところそれは、基本的な人間性の信頼といったことになろうか。
 それを能天気ととるか、人間性回復(ルネッサンス)ととるか。
  
 ま、あまり難しいこと考えずに楽しめば、“Aal Izz Well!”

 

評価:B+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!