すがも寄席


日時 2017年5月31日(水)13:00~
会場 スタジオフォー(庚申塚そば)
出演&演目
  • 柳亭市弥   : 「かぼちゃ屋」
  • 入船亭小辰  : 「団子坂奇談」
  • 桂宮治    : 「権助芝居」
  • 春風亭正太郎 : 「三枚起請」

 開演45分前に会場に着いたら、座席は7割方埋まっていた。スタジオフォーのホームページに「入れないかもしれないので、できるだけご予約を」と書いてあったので予約はしておいた。いったい誰の人気ゆえなのか?
 技の小辰?
 残り二人は初めて聴く。
 
 その後も入場者は増え続け、演者が出入りするための通路の部分を削って椅子を追加し、最終的には85名の大入り満員となった。巣ごもり寄席には過去数回来ているが、いつも20~30名くらい。こんなに入ったのを見るのは初めてである。この狭いスペースにこんなに入るとは思わなんだ。
 みなさん、誰がお目当て?(自分はもちろん市弥である。)

 トップバッターはその市弥(34)。
 久しぶりに見たが、なんか男っぽくなった。妻夫木聡みたいな万年モラトリアム青年っぽさが抜けて、風格が増した。寿も近いのか・・・。(寿とはどっちでしょう? 真打ち昇進? or ご成婚?)
 話の途中から立ち昇るオーラは相変わらず。これが出ると目が離せなくなる。他の芸達者な演者が望んでもなかなか得られない市弥の秘密兵器である。
 しかし、高座そのものはやや集中力を欠いた感があった。会場にいる女性ファンを意識しすぎたか。それとも満席の圧力で緊張したのか。
 いまが飛躍の正念場だと思う。精進してほしい。(いま気づいたが「正念」も「精進」も仏教用語だ)

 2番手の小辰(34)。
 若いのに本当に達者である。
 研究熱心で努力家なのだろう。玄人受けするタイプである。
 行きのチンチン電車(都電荒川線)で見かけたが、素顔は本当に地味目な普通の青年である。
 そのギャップが面白い。 

 中入り後の桂宮治(40)。
 公式ホームページによると、平成20年に桂伸治門下となったとあるから、33歳で落語家転進したことになる。思い切ったな。
 平成24年に二ツ目昇進。その後、NHK新人演芸大賞 落語部門 大賞はじめ、数多くの賞をもらっている有望株。芸風は、本人が「色物担当」と自らを茶化していたが、パワフルで表情も体の動きも派手で、諧謔味あふれている。ギャグ漫画的。子供から大人まで楽しめる。
 本日の演目に登場する権助の東北弁があまりに上手いので岩手出身かと思ったが、プロフによると東京都出身とある。だとすれば、相当の努力家の証拠だろう。
 本日一番受けていた。

 トリは春風亭正太郎(36)
 カピバラというあだ名を奉られているらしい。なるほど顔が小動物風で愛嬌がある。が、立ち居振る舞いには落ち着きがあり、羽織り姿もさまになっている。
 「三枚起請」を聴くのは2回目。面白いけれど難しい演目。花魁と彼女にだまされた三人の男、しめて四人の演じ分けがポイントとなるので演技力を問われる。本職の役者だとて一朝一夕には行くまい。前回ソルティが聴いたのは中央大学の落研(オチケン)のふられ亭ちく生であった。これが上手くて感心した。
 正太郎はさすがにトリをつとめるだけあって、話の運びよどみなく、演じ分けも見事。技巧を感じさせない自然な風味が、「巧さ」を感じさせてしまう小辰より、一段上手かもしれない。
 が、一つだけふられ亭ちく生のほうが優れている点があった。
 それは花魁・喜瀬川の役である。
 正太郎の花魁はどうにも中途半端である。女らしくもないし、遊女らしくもない。色気がない。これで三人の男を手玉に取れるとは思われない。
 男が女を演じるのはもって生まれた資質がものを言うところであろうが(市弥なんか上手いもんだ)、もっと色気の研究が必要だろう。


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カピバラ (げっ歯目テンジクネズミ科カピバラ属)


 本日の大入り満席は、出演者4名の顔触れが高レベルで揃っていたことによるのであった。
 久しぶりの寄席だったが、やっぱり落語は楽しい。
 落語は楽語だ。