10月8日(日)の介護支援専門員実務研修受講試験(長い!)を申し込んだ。
介護支援専門員とは、いわゆるケアマネジャーのこと。介護保険のケアプランを作るのが主たる仕事である。このケアプランに沿って、介護を必要とする高齢者は介護保険を利用し、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問看護を受けたり、デイサービスに通ったり、施設に一時的に入所したり、特別養護老人ホームや認知症のグループホームに入所したり、必要な福祉用具(杖とか車椅子とベッドとか)をレンタルしたりする。ケアマネジャー(以降ケアマネ)とは、介護を必要とする高齢者が「どこから・どんなケアを・どれくらいの頻度で」利用するかをプラグラミングする人と言っていいだろう。
むろん、ケアプランは介護を受ける当人や家族も作ることができる。自分の生活設計なのだから自分で作るに越したことはない。
が、自らの要介護度(=使える保険の限度額)に即したケアプランを作る作業はなかなか面倒だし、地域のどこに・どんな介護提供者がいて、その評判はどうかなどを把握するのは素人にはなかなか困難だし、ケアプランを作ってもらう料金は基本無料(一部負担なし)なので、たいていの人は地域包括支援センターや居宅介護支援事業所というところに勤務しているケアマネに依頼する。
利用者の生活設計をサポートするという意味で、ケアマネは介護保険の影の主役と言っていいだろう。
ソルティは今のところケアマネにはあまり興味がない。
高齢者と日々じかに向き合える現場のほうが面白い。ケアマネになると利用者の家族(主として娘や息子たち)との関わりが多くなる(当人が認知症なら必然的に)。面倒くさくてウンザリするような家族関係に付き合わなければならない。学校の先生が、自分の担当する生徒だけでなく、口うるさい親御さんとも付き合わなければならないのと似ている。というかその逆座標だ。
そしてまた、利益誘導の問題もある。
ケアマネの多くは、たとえば、社会福祉法人「金の成る木」の経営する居宅介護支援事業所「金を生む土地」に勤務して給料をもらっている。すると、利用者のケアプランを作るに際して、社会福祉法人「金の成る木」が経営するいくつかの介護事業所――訪問介護「金をつくる種」、訪問入浴「金を増やす葉っぱ」、通所介護「金の伸びる茎」、短期入所介護施設「金の咲く花」――をプランに組み込むよう、‘上のほうから’陰に陽に圧力を受ける。つまり、同法人内の系列事業所への利益誘導の役を果たす「金を運ぶ鳥」として利用されてしまうのである。「半数を超えるケアマネが営業活動を行っている」という調査結果も見たことがある。
もちろん、自分が所属する法人の系列介護事業所が自分でも誇れるくらい(自分の両親にも利用させたいくらい)良いものであるなら問題はないだろう。が、自分を信頼しケアプランの作成を一任してくれている要介護高齢者の立場に立ったときに、そこが必ずしも最も適切な利用先でないと分かっている場合、ケアマネは倫理的なジレンマを抱えることになる。利用者の幸せを願う志の高いケアマネほど葛藤に苦しむことになろう。
そんなところに身を置きたくない。
じゃあ、なぜ受けることにしたか?
きっかけは、職場の同僚から「来年度からケアマネの受験資格が変わるよ」と聞いたことにある。気になって調べてみると、ソルティの保持資格に即して述べると、こういうことが分かった。
● 平成29年度までは・・・ヘルパー2級を取ってからの実際の介護経験5年以上+介護福祉士資格、で受験できる。● 平成30年度以降は・・・介護福祉士資格を取ってからの実際の介護経験5年以上、で受験できる。
ソルティは実際の介護経験は5年を超えているが、介護福祉士を取ったのは1年半前なので、今年度を逃すとあと4年間はケアマネ試験を受けられない。
現金なもので、そうと知ったら「受けなきゃ損だ」という気になった。
しかも、今なら今年1月に終えたばかりの社会福祉士国家試験の受験勉強で、半年かけて習得した知識が頭の片隅におぼろげながら残っている。ケアマネの試験内容とかぶるところが多いので効率がよい。
「やるなら今でしょ」(古い)

というわけで、職場に実務経験証明書を発行してもらい、お決まりの顔写真を撮って、受験料9,200円を振り込み、願書を郵送した。
先日、本屋に行って教材を買った。
準備は整った。
あますところたった3ヶ月!
ケアマネ試験は全60問に対して制限時間2時間。もちろんマークシート方式だ。全150問に対して制限時間4時間の社会福祉士国家試験に比べればラクな気がする。しかも出題範囲の広さがまったく違う。社会福祉士はそれこそ福祉全般(19科目)であった。ケアマネはあたりまえだが介護分野に特化している。ポイントを絞りやすいのは確かである。
しかし、である。
社会福祉士国家試験の昨年度の合格率が25.8%(約4人に1人)だったのに比べ、昨年度のケアマネの合格率はなんとたった13.1%(7.7人に1人)である!
なんという狭き門か!
ちなみに昨年度の医師国家試験の合格率は88.7%、看護師試験の合格率は88.5%、介護福祉士の合格率は72.1%である。ケアマネの合格率は、第1回(1998年)の44.1%(2.3人に1人)を頂点とし年々低下している。低下させている。明らかに国としては、「ケママネ? もう間に合ってます」なのだろう。
合格ラインは総得点のおおむね70%で、毎年40点弱が合否の分かれ目となる。昨年度の問題は難しかったらしく35点以上で合格だった。小手調べに昨年度の過去問をやってみたところ30点(50%)だった。
まあ、やり甲斐のある出発点と言えよう。
まあ、やり甲斐のある出発点と言えよう。

受験を決めた今ひとつの切実なる理由がある。
記憶力の減退が只ならぬからだ。
30代後半から会話に「ほら、あれあれ、あれだよ」が増えてきて、同じような友人と笑い合っていたのも今思えば暢気な時代であった。40代半ばで忘れた名詞を思い出そうとするのさえ億劫になり、「すぐに出てこないのはたいして重要でないってことだ」と開き直った。その結果、日常生活に支障をきたすレベルに至ったのである。言いたい名詞がすんなり出てこないので会話が繋がらない。ばかりか人と会話するのも億劫になっている昨今なのである。
先日も、入所したばかりの認知症の男性利用者Kさんの魅力について、休憩室で女性スタッフ数人と話しているとき、「Kさんって○○に似ているよね」という大いに共感と賛同とウケが得られる一言をソルティは思いついた。しかし、肝心の○○という名前が出てこない。もちろん、○○の姿形は眼前に思い浮かぶ。キャラクターも周知だ。どころか、○○が登場する本は世界じゅうで記録的ベストセラーとなり、映画も大ヒットした。
頭の中に小さな砂時計が出現し、脳回路がフリーズしている音がする。
タイミングを逸してしまった。ソルティが脳内スキャンしている間に、会話は別のトピックにうつってしまい、気の利いた一言は永遠に埋没してしまった。
最近こういう展開が滅多やたらと多い。年を重ねるに連れて自分が高倉健なみに寡黙になっていくのを実感しているのだが、その実体は「言葉が出てこない」という10~20代の人が思いもつかないような老化現象ゆえなのである。(ただし、時間をかければ出てくる。こうやってブログを書くのは問題ない。情報のアウトプットに時間がかかるのである)
体と同様、脳も使わなければ、鍛えなければ、退化していく。仕事を支障なく行えているからと言って安心できない。というのも、毎日やっている仕事はほとんど自分の中で自動化(マニュアル化)しているから、頭を使っているようで実は使っていない場合が多いのである。
認知症を予防したいなら、意図的な負荷をかけるほかない。
期限と出題内容の決まった資格試験は記憶力を鍛える恰好の訓練となろう。動機づけも高く保てる。
期限と出題内容の決まった資格試験は記憶力を鍛える恰好の訓練となろう。動機づけも高く保てる。
そんなこんなで運よく13.1%の中に入って合格しても、ペーパードライバーならぬペーパーケアマネになる可能性大であるが、これから3ヶ月、またシコシコ勉強することになった。
退路を断って気合を入れるべく、こうしてブログに書いた次第。
退路を断って気合を入れるべく、こうしてブログに書いた次第。
上記の○○とは、「ハリーポッターに出てくるドビー」である。脇役のドビーはともかく、ハリーポッターという名詞さえ出てこなかった。
石井様
応援いただきまして、ありがとうございます。
> 私自身も介護保険料支払っていますが、結構高いです。文句言ってる高齢者も多いですよ。
>
介護保険に限らず、保険って「使わないに越したことはないけれど、使わないと損」している気分になりますよね。かと言って、「元を取るため」にわざわざ病気や障害になったり失業したりするのはおバカさんですし・・・。
保険事故で困っている人への寄付(=社会連帯)と考えて、自らの善業を積んだととらえるようにしています。実際、「困っている人の役に立ちますように」という思いで税金や保険料を払うと良いカルマを生むんじゃないでしょうか?
にしても、高いですねえ・・・・・・・。