日時 2017年8月27日(日)14:00~
会場 ティアラこうとう大ホール
曲目
 R. ワーグナー/歌劇『タンホイザー』序曲
 J. ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調
 A. ドヴォルザーク/交響曲第8番 ト長調
指揮 和田 一樹
ヴァイオリン独奏 崎谷 直人
チェロ独奏 門脇 大樹


 常連となりつつあるLiberal Ensemble Orchestra(LEO)の演奏会。今回は和田一樹の『タンホイザー』序曲が一等の楽しみだった。聖と性、信仰(巡礼)と快楽(ヴィーナスの丘)の狭間を彷徨う男の心象風景をどうメリハリつけて見せてくれるか、クライマックスのひたひた押し寄せる感動のうねりをどう焦らしながら盛り上げてくれるか。
 若い人はピンと来ないだろうが、この曲を聴くとジャンボジェットの離陸風景が思い浮かぶのである。逆に、羽田や成田に行って離陸滑走する飛行機を見ると、いまだに『タンホイザー』序曲が頭の中で鳴り出す。あの映像はインパクトあった。90年代の佐川急便のCMだったか。

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 残念なことに、夏バテで家を出るのが遅れ、開演時刻に間に合わなかった。聴けたのは2曲目から。


 ブラームスとドヴォルザークを続けて聴くと、ほぼ同じ時期に活躍した両作曲家の違いが明瞭となって面白い。
 二人は親交があり、8歳年上のブラームスが後輩のドヴォルザークを可愛がり、なにくれとなく支援したと言う。お互いに良きライバルとしても刺激し合い、ブラームスがハンガリー舞曲を書き、ドヴォルザークはスラブ舞曲を書いた。ドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いたブラームスは、「こんなに凄い曲が書けるのか。自分も書けばよかったが、もう遅い」と言ったそうな。(旬報社『小林研一郎とオーケストラへ行こう』参照)
 ブラームスは、管弦楽の様々な手法を駆使した複雑で緻密な曲の構成や完成度の高さでロマン派の中でも群を抜いていよう。玄人好みと言われるゆえんだ。が、ことメロディー作りに関しては苦労したようだ。一方、ドヴォルザークはチャイコフスキーに次ぐと言っていいくらいの才能あふれるメロディーメイカー。その上に管弦楽手法も見事。スラブ的というためでもあろうが、「こじらせていないマーラー」という印象がある。
 どっちが良いかは好みの問題なのだろう。ブラームスは楷書的、ドヴォルザークは草書的。あるいはブラームスは‘森鴎外風’、ドヴォルザークは‘夏目漱石風’という感じがする。(文体的にという意味で。人柄では逆かもしれない。なんとなく鴎外はドヴォルザーク同様‘鉄っちゃん’のような気がする)
 
 和田一樹&LEOの演奏は、上手くてよくまとまっていた。もはや安定感のある上手さ。
 二人の独奏者は実に息が合っていて、目をつぶって聴いていると、ヴァイオリンとチェロの音色の違いさえなければ、一人の独奏者による演奏と勘違いしかねないほどの一体感があった。
 
 夏バテしてなければ、もっと乗れたのに。
 ヴィーナスベルクが足りてないせい?