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日時 2017年9月30日(土)18:30~
会場 阿佐ヶ谷地域区民センター(東京都杉並区)
主催 NAZEN東京、NAZEN杉並

 福島原発事故での放射線被爆により福島の子供たちに甲状腺がんが増えている!――というショッキングなテーマを描いたドキュメンタリー『A2-B-C』(イアン・トーマス・アッシュ監督、2013年)を見て、その後が気になっていた。
 アマオケのコンサートに行ったとき、会場ロビーに置かれていたチラシを見て、この講演会を知った。ケアマネ試験も近いので、「行くかどうかはその時の気分次第」と鷹揚に構えていたら、前日の夜(金曜)に大阪の友人から数年ぶりの電話をもらった。
 用件はどうでもいいのだが、彼の近況によれば、
「最近、古なった屋根の瓦を全部葺き直して、ついでにソーラーパネルを敷設したんよ。全部で800万くらい使(つこ)うたかな」
「800万!?」
「ソーラーパネルだけなら200万くらいやった」
「そーらー、高いね」
「ま、やっぱ自分は原発に反対やし、ちいとでも自分にできることはやっとこ思ってな・・・」
(以上、関西弁は適当)
 むろん、電話を切ったソルティは「これは明日の講演に行きなさい」という啓示と思ったのである。

 講師の杉井吉彦はプロフィールによると、
 
1950年、奈良県生まれ。
東京医科大学卒業後、武蔵野赤十字病院に勤務し、整形外科副部長を務める。
1992年、国分寺市に本町クリニックを開設、院長に就任。
2011年3・11原発事故をうけ、「ふくしま共同診療所」建設に尽力。2012年12月の開院以来、同診療所の医師として毎週福島市へ通い、診療を行っている。

 自己紹介の中で杉井氏は、1985年8月に起きた日航ジャンボ機123便墜落事故の現場に医療班として立ち会った時のエピソードを語った。そして、「今にして思えば、あの飛行機事故こそ、戦後日本が唱えてきた科学技術信仰による安全神話に対する最初の警告の一打だった。にもかかわらず、なんら検証も反省もすることもなく(墜落事故の真の原因はいまだに確定されていない)同じ道を突き進んだ結果、福島原発事故という未曽有の悲劇につながった」といったようなことを述べた。
 ソルティも日航ジャンボ機墜落事故と福島原発事故に強い類似を感じている。加えて薬害エイズ事件もしかり。
 利権をひたすら追い求める政・官・財の癒着や腐敗。そこに担ぎ上げられ太鼓持ちとなる御用学者連中。彼らは目の前にある現実のデータを無視して、自分たちに都合の良い言説を臆面もなく流布し続ける。金と権力と威信のためなら、国民の命なぞ、患者の命なぞ何とも思わない。
 またしても同じ過ちが繰り返されている。

 杉井氏は医師としての立場から、素人にも分かるように「甲状腺とは何か、どういう働きを司っているのか、甲状腺がんになるとどうなるのか」という点をまずレクチャーした。
  • 甲状腺は成長ホルモンを生涯産出する。もし切除したら甲状腺ホルモンを一生補充し続けなければならない。
  • 甲状腺は頸動脈のそばにあり、がんが転移しやすい。手術も難しい。
  • 小児甲状腺がんは100万人に1~3人と言われるほど、本来なら少ない。

 次に、検査で見つかった福島県の子供たちの甲状腺がんの状況を示した。
  • 原発事故以来、小児甲状腺がんの患者は増え続けている。2017年6月5日に公表された福島県民調査報告書によると、合計190人。(実に2000人に1人) 今後も増え続けるのはまず間違いない。
  • しかし、政府も福島県も、我が国の甲状腺疾患の権威・山下俊一(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)を擁する福島県立医大も、事故との因果関係を否定している。
  • どころか、安倍政権は今年に入って、チェルノブイリでは強制避難ゾーンとされた年間放射線量20ミリシーベルトの区域を「安全」とし、避難指示解除を行った。それに合わせて福島県は自主避難者への住宅支援を打ち切った。つまり、汚染地域に還らざるをえないよう仕向けている。
  • 子供だけでなく、大人の中でも今後、橋本病などの甲状腺疾患が増えると予測される。
 
 お隣り韓国では文在寅大統領が今が年6月に脱原発宣言をし、液化天然ガスや再生可能エネルギーによる発電を柱にする方針を発表した。杉井氏によると、韓国の原子力発電所の近くに長年住んでいて甲状腺がんを発症した人が、原発会社を相手に裁判を起こし、因果関係が認められて勝訴したとのこと。これはつまり、原発事故が発生しなくても、放射性物質を放出する原発は健康に危害を与えるという事実が法的に認められたのである。 
 なんでこんな重要なニュースが日本で報道されない!?

 明らかに何か‘おかしなこと’ ‘恐ろしいこと’が進行している。
 
 昨日67歳の誕生日を迎えたばかりという杉井氏のわかりやすく、熱く、人間味あふれる語りに会場の温度は上がった。80名を超える参加者の中には元自衛官や事故後に原発で働いた人などもいた。
 右も左も関係なく、これはまことに由々しき事態。

 ケアマネ試験が終わったら、もっと調べてみよう。


誓いの碑
薬害エイズ和解を受け厚労省内に建立された「誓いの碑」