ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、神社仏閣に詣で、旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、無いアタマでものを考えて・・・・そんな平凡な日常の記録である。

　ケアマネ試験が終わった後、「とりあえず昼飯だ。うまい新そばが食いてぇ～」と思った。

　となると、深大寺だ。
　南大沢駅から京王相模原線で調布に出て、調布駅から深大寺行きのバスに乗った。このへんの決断と行動は我ながら早い。
　深大寺に行くのは学生の時以来、30年ぶり。どんな所だったか、すっかり忘れている。

　行ってみてびっくり。人がいっぱいだった。
「休日とは言え、こんなに人気あるスポットだったかな～？？？」　
　境内周辺には３０店舗ほどの蕎麦屋が並んでいるのだが、どこも満員で列をなしている。やはり、新そばの季節だからだろうか。
　とりあえず参詣を先にする。　

山門

　深大寺は正式名称を「浮岳山昌楽院深大寺」という天台宗のお寺である。
　７３３年（天平５）に唐で法相宗を学んだ満功上人が開山したのだが、清和天皇の御代（８５９年）、この寺に派遣されていた天台宗の高僧である恵亮和尚が、修法によって当地の乱を鎮めた功績により、天台宗に改められたそうな。
　その後、厄除け大師あるいは元三大師として知られる良源和尚（912－985）を信仰するようになり、関東一の密教寺院として隆盛を極めてゆく。

　

元三大師堂

　厄除け大師（角大師）
　伝説によると、良源が鬼の姿に化して疫病神を追い払った時の像であるという。
上記は永久保貴一の漫画『密教僧秋月慈童の秘儀霊験修法曼荼羅』より。
角大師誕生の故事が面白く描かれている。

　

本堂

　満功上人は、渡来人の福満と当地の豪族の娘との間に生まれた子だが、この二人の結婚はもともと「許されざる」ものであった。娘の両親は二人の仲を引き裂き、娘を湖の小島にかくまってしまう。福満が水の神である深沙大王（じんじゃだいおう）に祈願したところ、大きな霊亀が現れて、福満を背に乗せて愛する娘のところへ連れて行った。
　という江ノ島起源にも似たロマンチックなエピソードゆえに、この寺は本尊の阿弥陀三尊像とは別に深沙大王を祀っている。深大寺という名前も深沙大王から来ているのだそうな。
　この寺は「厄除け」と「縁結び」の効果が期待できるわけである。

深沙大王堂　

　本年９月１５日に深大寺に一大事件が起こった。

　寺所有の銅造釈迦如来倚像が国宝指定を受けたのである！

　だからこその人混みだったのである。
　ソルティはまったく知らなかった。
　釈迦堂の分厚いガラスの向こうに安置されている小さな（83.5センチ）釈迦如来像を、行列に従い、短時間拝み鑑賞する。
　ちょこなんと椅子に腰かけたお姿（倚像）は、たおやかで美しい。「畏れるな」と衆生を諭すべく掲げた右手の指先（第3，4，5指）が欠けているのが残念である。
　それにつけても、ケママネ試験が終わってしばらく遊び惚けようと思っていたら、いきなり釈迦じきじきに‘呼ばれる’とは！　やっぱり修行せんとや生まれけむ、か・・・。

1909年（明治42年）に元三大師堂の壇の下から発見された。
飛鳥時代後期（白鳳期）7世紀の作。関東以北で最も古い仏像とのこと。

　深大寺は湧水の多い国分寺崖線（ハケ）の崖面に抱かれるように立地している。境内にはいくつもの湧水源や池があり、近くには神代植物公園の水生植物園もある。深大寺そばの由来は、江戸時代に米の生産に適さない当地の小作人が、米の代わりにそばを作って寺に奉納したことによるらしいが、澄んだ水の豊富さがそば作りに（地ビール作りにも）適しているわけである。
　周囲の店でそばを茹でる香りが境内くまなく立ち込めて、そばアレルギーの人が来たら毛穴から入り込んで大変なんじゃなかろうかと思うほど。

松葉茶屋（犬も入れる）

ざるそばと深大寺ビール

　目的を達したあとは、お寺の裏に広がる東京都神代植物公園を散策する。
　約４８００種類の樹木が植えられ、四季折々の花が楽しめる。総面積488,197㎡（東京ドーム10個分強）。バラ園、つつじ園、梅園、萩園のほか熱帯植物を育成するでっかい温室がある。
　10月は花の少ない時期なのであるが、バラとダリヤ、むろん温室のランやベゴニアや睡蓮が楽しめた。ここはデートスポットに最適。