金時山は粘性の高い金時山溶岩から構成されており、他の古期外輪山と比べると山頂付近の傾斜が非常に急で、遠くから見るとひときわ高い峰が天を突いているように見える。この姿が、顔から急に突き出たイノシシの鼻のように見えるため、かつては猪鼻嶽(いのはなだけ)や猪鼻ヶ嶽(いのはながたけ)と呼ばれていた。
 江戸時代になると、坂田金時(公時とも)の故郷が足柄山であるとした「金太郎伝説」ができ、この頃から金時山と呼ばれるようになった。その後、1900年(明治33年)に童謡「金太郎」がつくられ、広く知れ渡るようになった。
 なお、金太郎伝説や童謡「金太郎」の歌詞2番「足柄山の山奥で けだもの集めて相撲のけいこ」で知られる足柄山(あしがらやま)は、金時山から足柄山地の足柄峠にかけての山々の呼称である。山域の呼称であり、足柄山という単独の峰は存在しない。(ウィキペディア「金時山」より抜粋)


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●歩いた日  10月31日(月)
●天気    晴れ
●タイムスケジュール
09:35 小田原駅発「桃源台」行バス乗車(箱根登山バス)
10:20 「仙石」下車
     歩行開始
10:45 公時神社拝殿
11:05 奥の院
12:00 稜線(明神ヶ岳分岐) 
     休憩(15分)
12:30 金時山頂上
     休憩、金太郎茶屋(70分)
13:40 下山開始
14:05 長尾山頂上(1,119m)
14:20 乙女峠
     昼食休憩(35分)
15:40 乙女口バス停
15:50 大黒山妙優寺
16:20 仙石バス停
     歩行終了
16:27 小田原駅行バス乗車
●最大標高差 512m
●所要時間 6時間(歩行4時間+休憩2時間)  


 小田原駅から箱根登山バスに乗り箱根の温泉街をひたすら登っていくと、平日だというのに人も車も多くて賑やかである。休日はまず近寄りがたい。
 金時山は箱根の一等奥にある。

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仙石原交差点
ここから歩行開始

 仙石バス停で降りて20分ほど国道を歩くと、右手に公時神社入口が現れる。祀ってあるのはもちろん坂田公時。金太郎のモデルとなった人物である。金時豆の名の由来でもあり、さらに息子の坂田金平は「きんぴらゴボウ」の名の由来だとか。
 なるほどどちらも精のつく食べ物である。

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 神社の右脇から登りが始まる。
 去ったばかりの台風の余波で渓流が勢いよく迸る。

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 山道を右手に少し入ったところにある奥の院の正体は、縦に2つに割れた大きな石であった。金太郎が山頂から蹴落としたと言われている。

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蹴落とし石
左下に置いた黄色いリュックで大きさを実感されたし

 金時山の麓には、金太郎が住んでいたといわれる「宿石(やどりいし)」と、小さな社が上に置かれた「蹴落とし石」とがあります。この社は金時山の「奥の院」として祀られ、公時を村の守り神として古くから盛大に公時祭を開いていましたが、明治の中ごろに途絶えてしまいました。ところが昭和6年(1931)に、その「宿石」が突然大音響をたてて真二つに割れるという事件がおきました。「これは公時さんのお怒りでは」と驚いた村人たちは、昭和8年(1933)に「公時祭」を復活させました。昭和36年(1961)には、公時神社の神殿も建てられ、この年から、端午の節句であり「子供の日」の祝日でもある5月5日に「公時祭」を開くようになりました。(小田原箱根商工会議所、箱根青年部ホームページより抜粋)

 蹴落とし石のてっぺんには小さな石の祠があり、その前にずで~んと横たわっているのが金太郎の愛玩具である。

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試してみたがまったく持ち上がらなかった
 
 しばらく進むと、さらに巨大な岩が現れる。こちらも真ん中で縦に割れている。宿石である。
 実際に人が宿れるくらいのスペースのある割れ目。
 岩の背後に回って確認したら、間を通り抜けられそう。
 やってみる。

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岩と岩の隙間から見上げた空
なんだか産まれる瞬間の胎児の心地
 
 
無事再誕(転生?)を終えて、さらに登る。

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山路来て なにやらゆかし すみれぐさ(芭蕉)


 
したたり落ちる汗と息切れに「そろそろ休憩入れようか」と思った頃、稜線に到着した。
 日差しは強いが、風が気持ちよい。
 登山客はまばらである。

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 色づいているブナ林をくぐり抜けるように登っていくと、一気に目の前が開けた。

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無言・・・・・・。



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仙石原の向こうに芦ノ湖が光る


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箱根随一の神山(1,432m)と大涌谷の噴煙


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南側につづく尾根のかなたに駿河湾が望める


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北東に広がる関東平野


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山頂にある金太郎茶屋
店内には若き日の長嶋茂雄や浅丘ルリ子などの写真とサインのほか、
常連登山者の名前を記した木札が飾ってある(3500回達成者がいる!)

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名物まさカリーうどん800円
味はふつう

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山頂足下

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生きとし生けるものが幸せでありますように


 到着した時は賑わいでいた山頂も、午後1時を回ると人波が去り、静けさが訪れる。
 そのなかを

「ド~ン、ド~ン」

 地響きのような爆音が鳴り渡る。
 富士の方角からだ。
 はじめは数十分間隔であったが、そのうち5分置きくらいになった。
 爆音とともに大地が、空気が振動する。
 正体は言うまでもなかろう。
 自衛隊の砲撃訓練ーー。
 山間に立ち上る白い煙は、噴煙や湯けむりだけではなかった。


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 もはや遠慮会釈ない爆音にせかされるように、下山開始。

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山頂をのぞむ1

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山頂をのぞむ2

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長尾山(1,119m)の山頂
だだっ広いだけでなんにもない。展望もない
 

 乙女峠で遅い昼食をとる。
 ここは富士見三峠(ふじみみつとうげ)の一つに数えられる景勝地。たしかに西側の林を切り開いた崖上からみる富士山は圧倒的な神々しさである。


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箱根の仙石原に「とめ」という名前の若い女性が住んでいた。「おとめさん」と呼ばれていたこの娘は父の病の治癒を願い、この峠を越えて御殿場の地蔵堂へ百か日の願掛けに参拝し続け、最後には願いが叶い父の身代わりとなってこの峠で亡くなった。(ウィキペディア「乙女峠」より)
 
 伝承がどこまで真実なのかは怪しいところだが、山道から降り立った国道の脇にススキに囲まれるように石碑とともに地蔵様が立っていた。

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 仙石バス停に戻る途中にあった大きな如来像。
 大黒山妙優寺というお寺があるのだが、宗派も縁起も表示されていない。
 本堂に至る階段脇には観音像があり、石碑には「北島三郎書」と刻まれている。
 本堂はシンメトリカルでモダン。
 謎だ。

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 夕日に輝く金時山、可愛らしい道祖神に見送られながら、バス停へ。


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 箱根湯本で途中下車し、駅近くの「やじきたの湯」で日帰り入浴(1000円)する。
 思えば、箱根の湯に浸かるのは数十年ぶり。

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 箱根登山鉄道で小田原駅に戻る。

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 平穏な秋の静けさの中、忍び寄ってくる冬の足音が聞こえるだろうか。


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