★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
4月1日 映画:『真夜中のパーティー』(ウィリアム・フリードキン監督、1970年アメリカ、120分)
・・・・・原題はThe Boys in the Band 「ハリウッド映画史において初めてゲイを真正面から描いた作品」だそうである。フリードキン監督は『クルージング』『エクソシスト』などゲイ色の強い作品を撮っているが、ジャンヌ・モローはじめ4回結婚しており本人はストレートのよう。本作は自己肯定できないゲイの集まりの特徴が誇張的に描き出されていて、今見るとかなりつらい。告白ゲームに至る脚本の不自然さも舞台ならともあれ映画だとつらい(もともと舞台劇だった)。でも、ここからしかスタートできなかったのだ。
★★★
4月2日 本:『巡礼 やすらぎの旅』(森山透著、2004年PHP研究所)
・・・・・30代半ばで妻子と別れ、50代半ばにしてリストラ。意を決して四国へ旅立った男の巡礼記。ただひたすら無心に歩き八十八のお寺を巡りながら、大自然や「おせったい」してくれる土地の人々、同じ遍路仲間との出会いと別れを繰り返し、自分を見つめ直し、これまでとは別の価値観を宿し再生していく。巡礼とは生まれ変わりの旅なのであろう。
★★★
4月3日 映画:『そして父になる』(是枝裕和監督、2013年日本、120分)
・・・・・第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。出産時の乳児取り違いが就学前に発覚。惑い悩む二つの家族の姿を描く。最終的には「生みの親より育ての親」という結末に至るのだが、その過程で「親であること、父親であること」を発見していくエリートサラリーマン(=福山雅治)の変化が中心となる。福山は悪くはない。が、相手方の夫婦を演じるリリー・フランキーと真木ようこが圧倒的に良い。とくに真木ようこは光っている。いま日本で一番いい女優であろう。フランキーが演じるのは、福山とは対極的な子煩悩のダメ男。その彼が発する「親子は一緒にいる時間の量が決定的」といった趣旨のセリフが印象的である。
★★★★
4月4日 本:『修道女フィデルマの叡智』(ピーター・トレメイン著、2000年刊行、2009年創元推理文庫)
・・・・・七世紀アイルランドの美貌の修道女にして知性高きドーリィー(法廷弁護士)であるフィデルマの活躍を描くミステリー短編集。ブラウン神父の女性版とった期待を抱いて読んだ。トリックや推理自体は目新しいものでも目覚ましいものでもなく、チェスタトンの足元にも及ばない。が、古代のアイルランドの文化や法や価値観を伺う楽しさがあふれている。
★★
4月6日 本:『欧米に寝たきり老人はいない 自分で決める人生最後の医療』(宮本顕二、宮本礼子著、2015年中央公論新社)
・・・・・終末期の延命治療の是非を問う提言書。口から食べられなくなった段階で、点滴や経管栄養や人工呼吸器の装着や心肺蘇生をしないという欧米と、寝たきりで意思疎通できなくても体にチューブをつけてとにかく生かし続ける日本。どちらがいいのか? というより、8割の日本人が終末期の延命措置を望んでいないのに、本人の希望を無視して延命措置がまかり通ってしまう現状こそ問われるべきだろう。非常な速度で進み過ぎた医療に、倫理なり死生観なりが追い付いていないことがその背景にある。
★★★
4月7日 映画:『たかが世界の終わり』(クサヴィエ・ドラン監督、2016年フランス・カナダ、99分)
・・・・・第69回カンヌグランプリ(審査員特別賞)受賞。自らの死の宣告を伝えるために、12年間疎遠にだった家族のもとに戻ってきた34歳の青年ギャスパー。騒々しく迎えてくれる家族たちに打ち明けようと試みるが、思いが通じ合わず口げんかの絶えない関係の中、なかなか機会が得られない。最後は無事打ち明けて家族が涙のうちに和解するハートウォーミングな展開かと思っていたら、結局打ち明けられないまま故郷を後にすることになる。肩透かしな感じは残るが、そのほうがむしろありがちで自然なのかもしれない。死がすべてを水に流して「雨降って地固まる」というのはご都合主義なのだろう。
★★
4月15日 アマオケ:一橋大学管弦楽団スプリングコンサート(指揮:田中一嘉、一橋大学兼松講堂)
①モーツァルト:歌劇「劇場支配人」
②ハチャトリアン:組曲「行進曲仮面舞踏会」
③ブラームス:交響曲第2番
④(アンコール)ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
・・・・・新緑あふれる国立キャンパスは気持ちいい。その中に立つ褐色砂岩の古風な建物は西洋のお菓子のよう。ここでクラシックが聴けるというだけでも得した気分になる。ブラームスは自分にとってやっぱりつまらないけれど。
★★
4月15日 美術展:「99歳の彫刻家 関頑亭」(国立市、たましん歴史・美術館)
・・・・・大正8年(1919年)谷保村(現・国立市)に生まれた関頑亭(せきがんてい)の作品展。彫刻だけでなく絵画・仏画・書・収集した骨董品の一部なども展示され、個性豊かなバラエティに富んだ才能が伺える。中野の宝仙寺にある弘法大師像と20年の歳月をかけ昨年完成した不動明王坐像が彼の代表作らしい。それにしても99歳で現役とは素晴らしい(97歳にしてフランスにスケッチ旅行に出向いている!)
4月16日 本:『死刑執行人 残された日記と、その真相』(ジョエル・F・ハリントン著、2013年原著刊行、2014年柏書房より邦訳刊行)
・・・・・16世紀ドイツの繁栄豊かな都市ニュルンベルクで、父から継いだ死刑執行人をしていた男フランツ・シュミットの残した日記をもとに、当時の犯罪や刑罰の模様や死刑執行人の仕事や暮らしぶりを描き出す歴史ルポ。と同時に、運命の悪戯から死刑執行人に身を落とされた父の無念を胸に刻み、生涯をかけて名誉を取り戻そうと誓い、謹厳実直な仕事ぶりと折り目正しい生活(禁酒している!)によって周囲の信頼を得て、最終的に目的を果たした男の執念の物語でもある。映画化したら面白かろう。
★★★
4月17日 漫画:『坊主DAYS2 お寺とみんなの毎日』(画:杜康潤、2011年新書館)
・・・・・著者(♀)が臨済宗のお寺の住職である兄の生活を取材した漫画。
★★
4月18日 本:『あの世に聞いた、この世の仕組み』(雲黒斎著、2010年サンマーク出版)
・・・・・広告代理店で働いていた30歳の時に鬱病を発症、薬の影響もあって突然守護霊との交信が始まってしまった著者。疑心暗鬼になりつつも守護霊からのメッセージに心惹かれ、スピリチュアリズムにはまりこむ。内容は大方のスピリチュアル本とくに非二元の教えと変わりない。こういう人、増えてきているんだなあ~。人類の進化は悟り方向にあるのだろう。
★★
4月20日 本:『プルーフ・オブ・ヘヴン』(エベン・アレグザンダー著、2012年原著刊行、2013年早川書房より邦訳刊行)
・・・・・細菌性髄膜炎で大脳新皮質が機能停止し昏睡状態に陥った著者は、7日後に奇跡的に意識を取り戻し、回復した。その間、死後の世界を訪れていたのである。「臨死体験は脳の隠されたエマジェンシー機能にすぎない」という唯物論者の説を覆すような経験をしたのが、唯脳論者にして優秀なる脳神経外科医であったという点が本書一番のポイントである。数ある臨死体験と違って面白いのは、体験中の著者が自己のアイデンティティを一切失っていたという点。自分がだれかという記憶を持たず、意識だけで旅していたのである。識(ヴィンニャーナ)のことを言っているのだろう。
★★★★
4月21日 アマオケ:中野区民交響楽団第64回定期演奏会(指揮:松岡究、なかのZERO)
①ドヴォルザーク:序曲「オセロ」 作品93
②ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ単調 作品104(チェロ独奏:中木健二)
③アンコール:不明
④アレクサンドル・グラズノフ:交響曲第5番 変ロ長調 作品55
・・・・・今回は②が目的であった。本当にドヴォルザークの天才が漲る素晴らしい曲。ブラームスがどれだけ嫉妬したかが想像にあまりある。若き日に恋してふられた女性(妻君の姉)への追悼ソングだったとは知らなかった。アントニンの人間っぽさが伺えるエピソードだが、曲そのものは天上的で崇高である。グラズノフは初めて聴いたが一度聴けば十分かな。オケは前半いまいち鳴りきれていなかった。
★★
4月28日 映画:『心が叫びたがってるんだ。』(長井龍雪監督、2015年日本、119分)
・・・・・秩父を舞台とした学園アニメ。秩父札所第10番大慈寺や横瀬駅、武甲山が出てくる。ストーリーやキャラクター設定に強引さは目立つものの「青春してる」感が全編たぎっていて好感持てる。絵のクオリティははんぱない高さ。ベートーヴェンの「悲愴」とオズの魔法使いの「オーヴァ・ザ・レインボウ」が対位法的にぴったり絡み合うとは発見であった。
★★
4月29日 映画:『午後8時の訪問者』(監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟、2016年ベルギー・フランス、106分)
・・・・・原題 La fille inconnue は「見知らぬ少女」の意。川岸で遺体となって見つかった移民系の少女が最後に助けを求めたのは、優秀な女性医師ジェニーの診療所だった。診療時間を過ぎていたことから扉を開けるのを拒否したジェニー。監視カメラからそのことを知り罪悪感にかられた彼女は、少女の身元を探ろうと写真を手に探索を開始する。よくできたミステリーサスペンス。傑作『少年と自転車』と同様、「他者に関心を持つこと、責任をもって関わること」の大切さを伝えているように思う。主役の医師を演じるアデル・エネルの演技が見事。
★★★
4月29日 映画:『ミッドナイト・スペシャル』(ジェフ・ニコルズ監督、2016年、111分)
・・・・・地味だが、引き締まった脚本と役者連の渋い演技の応酬により印象に残る佳作。SF✕父子の絆が基本設定なのだが、なんとなく本邦の古典『竹取物語』を思わせる。特異な能力をもつ子供が実は別世界の人間で、彼を利用しようとする複数の追跡者の手を逃れ、最後は愛する両親と別れて故郷に帰る。子供とっての幸せを第一に考え、住みづらい人間界に親のエゴで居続けさせるより、別れを決意する親のきびしいまでにストイックな姿勢がアメリカンというか個人主義というか。
★★★
4月30日 映画:『禁じられた歌声』(アブデラマン・シサコ監督、2014年フランス・モーリタニア、98分)
・・・・・原題『timbuktu』 西アフリカに位置するマリ共和国の古都ティンブクトゥ。住民は信仰深く、自由と平和のうちに暮らしていた。ある日突然イスラム過激派がやってきて、「神の名のもとに」街を支配し、住民を虐待する。自身もイスラム教徒である監督が、イスラム社会のリアルな現実をドキュメンタリータッチで描いている。フランスのセザール賞で最優秀作品賞を含む7冠を獲得し、100万人動員したそうだ。社会性の高い優れた映画には違いないが、「なぜ、そこまでの高評価?」と思うなかれ。マリ共和国は1892~1960年フランスの植民地だったのである。
★★★
4月30日 本:『もっと あの世に聞いた、この世の仕組み』(雲黒斎著、2013年サンマーク出版)
・・・・・上記(4/18)本の続編。タイトル通り、著者が守護霊に聞いた「この世の仕組み」が巧みな比喩を用いながらわかりやすく語られる。「私のほんとうの正体はいのちにほかならず、いのちはこの世にたった一つしかない。だから私(=自己)はいない。けれど私(=いのち)はすべてである」ってことになる。このいのちを仏教では「識」「気づき」と言っているのだろう。私見だが、非二元の教えの終点はこのいのちの体得(?)にあり、仏教ではこのいのち(識)さえ「ない」地点を目標にしているのではなかろうか。
★★★★
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
4月1日 映画:『真夜中のパーティー』(ウィリアム・フリードキン監督、1970年アメリカ、120分)
・・・・・原題はThe Boys in the Band 「ハリウッド映画史において初めてゲイを真正面から描いた作品」だそうである。フリードキン監督は『クルージング』『エクソシスト』などゲイ色の強い作品を撮っているが、ジャンヌ・モローはじめ4回結婚しており本人はストレートのよう。本作は自己肯定できないゲイの集まりの特徴が誇張的に描き出されていて、今見るとかなりつらい。告白ゲームに至る脚本の不自然さも舞台ならともあれ映画だとつらい(もともと舞台劇だった)。でも、ここからしかスタートできなかったのだ。
★★★
4月2日 本:『巡礼 やすらぎの旅』(森山透著、2004年PHP研究所)
・・・・・30代半ばで妻子と別れ、50代半ばにしてリストラ。意を決して四国へ旅立った男の巡礼記。ただひたすら無心に歩き八十八のお寺を巡りながら、大自然や「おせったい」してくれる土地の人々、同じ遍路仲間との出会いと別れを繰り返し、自分を見つめ直し、これまでとは別の価値観を宿し再生していく。巡礼とは生まれ変わりの旅なのであろう。
★★★
4月3日 映画:『そして父になる』(是枝裕和監督、2013年日本、120分)
・・・・・第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。出産時の乳児取り違いが就学前に発覚。惑い悩む二つの家族の姿を描く。最終的には「生みの親より育ての親」という結末に至るのだが、その過程で「親であること、父親であること」を発見していくエリートサラリーマン(=福山雅治)の変化が中心となる。福山は悪くはない。が、相手方の夫婦を演じるリリー・フランキーと真木ようこが圧倒的に良い。とくに真木ようこは光っている。いま日本で一番いい女優であろう。フランキーが演じるのは、福山とは対極的な子煩悩のダメ男。その彼が発する「親子は一緒にいる時間の量が決定的」といった趣旨のセリフが印象的である。
★★★★
4月4日 本:『修道女フィデルマの叡智』(ピーター・トレメイン著、2000年刊行、2009年創元推理文庫)
・・・・・七世紀アイルランドの美貌の修道女にして知性高きドーリィー(法廷弁護士)であるフィデルマの活躍を描くミステリー短編集。ブラウン神父の女性版とった期待を抱いて読んだ。トリックや推理自体は目新しいものでも目覚ましいものでもなく、チェスタトンの足元にも及ばない。が、古代のアイルランドの文化や法や価値観を伺う楽しさがあふれている。
★★
4月6日 本:『欧米に寝たきり老人はいない 自分で決める人生最後の医療』(宮本顕二、宮本礼子著、2015年中央公論新社)
・・・・・終末期の延命治療の是非を問う提言書。口から食べられなくなった段階で、点滴や経管栄養や人工呼吸器の装着や心肺蘇生をしないという欧米と、寝たきりで意思疎通できなくても体にチューブをつけてとにかく生かし続ける日本。どちらがいいのか? というより、8割の日本人が終末期の延命措置を望んでいないのに、本人の希望を無視して延命措置がまかり通ってしまう現状こそ問われるべきだろう。非常な速度で進み過ぎた医療に、倫理なり死生観なりが追い付いていないことがその背景にある。
★★★
4月7日 映画:『たかが世界の終わり』(クサヴィエ・ドラン監督、2016年フランス・カナダ、99分)
・・・・・第69回カンヌグランプリ(審査員特別賞)受賞。自らの死の宣告を伝えるために、12年間疎遠にだった家族のもとに戻ってきた34歳の青年ギャスパー。騒々しく迎えてくれる家族たちに打ち明けようと試みるが、思いが通じ合わず口げんかの絶えない関係の中、なかなか機会が得られない。最後は無事打ち明けて家族が涙のうちに和解するハートウォーミングな展開かと思っていたら、結局打ち明けられないまま故郷を後にすることになる。肩透かしな感じは残るが、そのほうがむしろありがちで自然なのかもしれない。死がすべてを水に流して「雨降って地固まる」というのはご都合主義なのだろう。
★★
4月15日 アマオケ:一橋大学管弦楽団スプリングコンサート(指揮:田中一嘉、一橋大学兼松講堂)
①モーツァルト:歌劇「劇場支配人」
②ハチャトリアン:組曲「行進曲仮面舞踏会」
③ブラームス:交響曲第2番
④(アンコール)ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
・・・・・新緑あふれる国立キャンパスは気持ちいい。その中に立つ褐色砂岩の古風な建物は西洋のお菓子のよう。ここでクラシックが聴けるというだけでも得した気分になる。ブラームスは自分にとってやっぱりつまらないけれど。
★★
兼松講堂
4月15日 美術展:「99歳の彫刻家 関頑亭」(国立市、たましん歴史・美術館)
・・・・・大正8年(1919年)谷保村(現・国立市)に生まれた関頑亭(せきがんてい)の作品展。彫刻だけでなく絵画・仏画・書・収集した骨董品の一部なども展示され、個性豊かなバラエティに富んだ才能が伺える。中野の宝仙寺にある弘法大師像と20年の歳月をかけ昨年完成した不動明王坐像が彼の代表作らしい。それにしても99歳で現役とは素晴らしい(97歳にしてフランスにスケッチ旅行に出向いている!)
宝仙寺の弘法大師像
なんという柔和さ!
なんという柔和さ!
4月16日 本:『死刑執行人 残された日記と、その真相』(ジョエル・F・ハリントン著、2013年原著刊行、2014年柏書房より邦訳刊行)
・・・・・16世紀ドイツの繁栄豊かな都市ニュルンベルクで、父から継いだ死刑執行人をしていた男フランツ・シュミットの残した日記をもとに、当時の犯罪や刑罰の模様や死刑執行人の仕事や暮らしぶりを描き出す歴史ルポ。と同時に、運命の悪戯から死刑執行人に身を落とされた父の無念を胸に刻み、生涯をかけて名誉を取り戻そうと誓い、謹厳実直な仕事ぶりと折り目正しい生活(禁酒している!)によって周囲の信頼を得て、最終的に目的を果たした男の執念の物語でもある。映画化したら面白かろう。
★★★
4月17日 漫画:『坊主DAYS2 お寺とみんなの毎日』(画:杜康潤、2011年新書館)
・・・・・著者(♀)が臨済宗のお寺の住職である兄の生活を取材した漫画。
★★
4月18日 本:『あの世に聞いた、この世の仕組み』(雲黒斎著、2010年サンマーク出版)
・・・・・広告代理店で働いていた30歳の時に鬱病を発症、薬の影響もあって突然守護霊との交信が始まってしまった著者。疑心暗鬼になりつつも守護霊からのメッセージに心惹かれ、スピリチュアリズムにはまりこむ。内容は大方のスピリチュアル本とくに非二元の教えと変わりない。こういう人、増えてきているんだなあ~。人類の進化は悟り方向にあるのだろう。
★★
4月20日 本:『プルーフ・オブ・ヘヴン』(エベン・アレグザンダー著、2012年原著刊行、2013年早川書房より邦訳刊行)
・・・・・細菌性髄膜炎で大脳新皮質が機能停止し昏睡状態に陥った著者は、7日後に奇跡的に意識を取り戻し、回復した。その間、死後の世界を訪れていたのである。「臨死体験は脳の隠されたエマジェンシー機能にすぎない」という唯物論者の説を覆すような経験をしたのが、唯脳論者にして優秀なる脳神経外科医であったという点が本書一番のポイントである。数ある臨死体験と違って面白いのは、体験中の著者が自己のアイデンティティを一切失っていたという点。自分がだれかという記憶を持たず、意識だけで旅していたのである。識(ヴィンニャーナ)のことを言っているのだろう。
★★★★
4月21日 アマオケ:中野区民交響楽団第64回定期演奏会(指揮:松岡究、なかのZERO)
①ドヴォルザーク:序曲「オセロ」 作品93
②ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ単調 作品104(チェロ独奏:中木健二)
③アンコール:不明
④アレクサンドル・グラズノフ:交響曲第5番 変ロ長調 作品55
・・・・・今回は②が目的であった。本当にドヴォルザークの天才が漲る素晴らしい曲。ブラームスがどれだけ嫉妬したかが想像にあまりある。若き日に恋してふられた女性(妻君の姉)への追悼ソングだったとは知らなかった。アントニンの人間っぽさが伺えるエピソードだが、曲そのものは天上的で崇高である。グラズノフは初めて聴いたが一度聴けば十分かな。オケは前半いまいち鳴りきれていなかった。
★★
4月28日 映画:『心が叫びたがってるんだ。』(長井龍雪監督、2015年日本、119分)
・・・・・秩父を舞台とした学園アニメ。秩父札所第10番大慈寺や横瀬駅、武甲山が出てくる。ストーリーやキャラクター設定に強引さは目立つものの「青春してる」感が全編たぎっていて好感持てる。絵のクオリティははんぱない高さ。ベートーヴェンの「悲愴」とオズの魔法使いの「オーヴァ・ザ・レインボウ」が対位法的にぴったり絡み合うとは発見であった。
★★
4月29日 映画:『午後8時の訪問者』(監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟、2016年ベルギー・フランス、106分)
・・・・・原題 La fille inconnue は「見知らぬ少女」の意。川岸で遺体となって見つかった移民系の少女が最後に助けを求めたのは、優秀な女性医師ジェニーの診療所だった。診療時間を過ぎていたことから扉を開けるのを拒否したジェニー。監視カメラからそのことを知り罪悪感にかられた彼女は、少女の身元を探ろうと写真を手に探索を開始する。よくできたミステリーサスペンス。傑作『少年と自転車』と同様、「他者に関心を持つこと、責任をもって関わること」の大切さを伝えているように思う。主役の医師を演じるアデル・エネルの演技が見事。
★★★
4月29日 映画:『ミッドナイト・スペシャル』(ジェフ・ニコルズ監督、2016年、111分)
・・・・・地味だが、引き締まった脚本と役者連の渋い演技の応酬により印象に残る佳作。SF✕父子の絆が基本設定なのだが、なんとなく本邦の古典『竹取物語』を思わせる。特異な能力をもつ子供が実は別世界の人間で、彼を利用しようとする複数の追跡者の手を逃れ、最後は愛する両親と別れて故郷に帰る。子供とっての幸せを第一に考え、住みづらい人間界に親のエゴで居続けさせるより、別れを決意する親のきびしいまでにストイックな姿勢がアメリカンというか個人主義というか。
★★★
4月30日 映画:『禁じられた歌声』(アブデラマン・シサコ監督、2014年フランス・モーリタニア、98分)
・・・・・原題『timbuktu』 西アフリカに位置するマリ共和国の古都ティンブクトゥ。住民は信仰深く、自由と平和のうちに暮らしていた。ある日突然イスラム過激派がやってきて、「神の名のもとに」街を支配し、住民を虐待する。自身もイスラム教徒である監督が、イスラム社会のリアルな現実をドキュメンタリータッチで描いている。フランスのセザール賞で最優秀作品賞を含む7冠を獲得し、100万人動員したそうだ。社会性の高い優れた映画には違いないが、「なぜ、そこまでの高評価?」と思うなかれ。マリ共和国は1892~1960年フランスの植民地だったのである。
★★★
4月30日 本:『もっと あの世に聞いた、この世の仕組み』(雲黒斎著、2013年サンマーク出版)
・・・・・上記(4/18)本の続編。タイトル通り、著者が守護霊に聞いた「この世の仕組み」が巧みな比喩を用いながらわかりやすく語られる。「私のほんとうの正体はいのちにほかならず、いのちはこの世にたった一つしかない。だから私(=自己)はいない。けれど私(=いのち)はすべてである」ってことになる。このいのちを仏教では「識」「気づき」と言っているのだろう。私見だが、非二元の教えの終点はこのいのちの体得(?)にあり、仏教ではこのいのち(識)さえ「ない」地点を目標にしているのではなかろうか。
★★★★