★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損


宝仙寺 008


5月1日 映画:『人魚姫』(チャウ・シンチー監督、2016年中国、香港、93分)
・・・・・最初の5分観て「借りて失敗した」と思い、次の5分で「いや、面白いのか?」と思い直し、さらなる5分で「停止ボタンを押そう」と逡巡し、ダメ押しの5分で「これ傑作かも」とリモコンを下に置いた。あとはラストまで中国B級映画ならではの奇想天外とハチャメチャとスピードに心ごと持っていかれた。気が付けば滂沱の涙・・・・。童話人魚姫をモチーフにした衝撃・笑劇・生激のエコロジカル・ラブロマンス。タコ兄演じるショウ・ルオがその足のようにきわめて味わい深い。
★★★★


5月1日 映画:『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(長井龍雪監督、2013年、99分)
・・・・・『心が叫びたがってるんだ。』と同じ制作陣による同じく秩父を舞台にした青春アニメドラマ。というか、この作品の成功が『ここさけ』に繋がったのだろう。もともとは全11話のテレビドラマとしてフジテレビで放映されていたものを99分にまとめ上げているので、現在進行形のドラマではなく、すでに終わってしまった主要な物語をエピソードを連ねて回想するという構成になっている。テレビですでに登場人物のキャラクターも筋書きも知っているファンにとっては、感動シーンの効率の良いダイジェスト版ということで楽しめるだろう。はじめてこの物語に接したソルティのような者にとっては、登場人物に共感する機会も与えられないまま感動(させたいのであろう)シーンばかりが一方的に押しつけられ、うざったいばかり。劇場版でのデビューは失敗だった。にしても登場人物の一人(少女)に「アナル」というニックネームをつける感覚は解せない。



5月3日 本:『平賀源内の生涯 甦る江戸のレオナルド・ダ・ビンチ』(平野威馬雄著、1978年サンポウジャーナル刊行、1989年ちくま文庫)
・・・・・「エレキテル、土用の丑、男色」で名の知られた江戸の天才奇人・平賀源内の伝記。伝統や制度や世間体や欲得に縛られない自由闊達な生き方は気持ちいい。庶民から大名から幕府の中枢(老中田沼意次)に至るまで、あらゆる人々の贔屓と尊敬と注目を浴びていた絶頂期に、発作的につまんない理由から殺人を犯して獄中に入れられ50歳の生涯を閉じるあり方も、ある意味源内らしく、カッコいい。秩父札所第7番・法長寺の牛伏堂を設計したのは、源内が秩父の鉱山資源発掘に力を入れていて、ちょくちょく秩父を訪れていた関係からであろう。

★★★

5月4日 映画:『生まれ変わりの村』(森田健制作、2016年、90分)
・・・・・『あの世はどこにあるのか』の著者にしてスピリチュアル冒険野郎の森田健の同名書をドキュメンタリー映画にしたもの。中国の奥地にある住民の多くが前世の自分を覚えている「生まれ変わりの村」の紹介を中心に、輪廻転生の真実を探る。村人へのインタビューの中で、前世と性別が変わってしまった女性が、「前世を覚えていると性愛の部分で戸惑うことが多い。自分の前世は男だったので、いまの夫を愛するのが難しい」という発言があった。面白い。最後に出てくる森田家で飼っていた犬の転生の話は泣ける。
★★

5月5日 映画:『疑惑』(野村芳太郎監督、1982年松竹、127分)
・・・・・松本清張原作のミステリーサスペンス。桃井かおりの憎々しい悪女ぶりと岩下志麻の毅然とした弁護士ぶりが、役の上でも演技の上でも火花散る闘いとなって見物である。赤ワインをぶっかけ合うシーンは日本映画史に残る。他にも、柄本明、山田五十鈴、名古屋章の個性的な演技が際立ち、「この時代はまだ役者が揃っていたんだなあ」とつくづく思う。エンターテナーとしての野村の腕は極上である。志麻姐さんは旦那(篠田正浩)以外の監督の時のほうがもしかしたら冴えている?

★★★

5月6日 本:『だいたい四国八十八ヶ所』(宮田珠己著、2014年、集英社文庫)

・・・・・とりたてて信仰心も神妙な理由もなく「ただ自然の中を歩きたい」中年男子による四国遍路区切り打ち紀行。途中しまなみ海道を自転車で渡ったり、四万十川をカヌーで下ったり、夏の太平洋でシュノーケリングしたり、遊びと観光も兼ねて四国を満喫しながらも、ちゃんと徒歩で一周し88の御朱印をもらっている。不思議なのは、上記の気ままに遊んでいるシーンの文章よりも、地道な巡礼シーンの文章のほうが断然イキイキしているところ。

★★★

5月6日 本:『科学のアルバム カイコ まゆからまゆまで』(岸田功著、1985年あかね書房)
・・・・・老人ホームで高齢者と話していると、養蚕の話で盛り上がることが多い。農業のかたわらカイコを飼っていた人が結構多いのだ。東京タワーに繭をはるモスラのイメージしか持たないソルティ。情けないので勉強してみた。カイコって、人の手なしではまったく生きられないペットなのであった。

★★★


5月7日 映画:『怒り』(李相日監督、2016年、142分)
・・・・・吉田修一の同名小説を映画化。上記『疑惑』コメントで「昔は役者が揃っていた」としたり顔に書いたが、前言撤回。今日でもこれだけ役者を揃えることができる。渡辺謙と宮崎あおいの愛おしすぎる親子像、綾野剛と妻夫木聡の切なすぎる恋人像、森山未來の気迫、松山ケンイチの直感的把握力、加えて世界の坂本龍一。才能ある映画人たちのここぞの集中力を魔術的かつパセティックに結合させた李監督の手腕はすでに国際レベル。なるほど重い。ヤワな覚悟じゃ見切れない。けれども心ある者は観ておくべきだろう。

★★★★

5月10日 秩父34ヵ所札所めぐり第2日
・・・・・第12番から第23番まで。秩父事件を思う旅。

5月12日 映画:『配達されない三通の手紙』(野村芳太郎監督、1979年松竹、131分)
・・・・・原作はエラリー・クイーンの『災厄の町』。好きなミステリーではあるが、トリックや謎解き自体は目覚ましいものではない。なぜ地味なこの小説を映画化する?・・・と当時は不思議に思ったものだ。佐分利信、乙羽信子 、小川眞由美、栗原小巻、神崎愛、松坂慶子 、竹下景子、片岡孝夫といった豪華俳優陣の共演が見物。アメリカから来た親戚ボブを演じる蟇目良がなつかしい。「そう言えば見ないなあ」と思ったら役者廃業したらしい。野村監督の演出はあいかわらず手堅い。
★★

5月13日 本:『未来からの生還 臨死体験者が見た重大事件』(ダニオン・ブリンクリー、ポール・ペリー共著、1994年発表、同朋舎)
・・・・・雷に打たれて臨死体験することになった男の手記。いまや数多い同種の本とくらべて本書がユニークなのは、体験前のダニオンがかなりの悪人だったこと(殺人もしている)と、体験後に予知や読心術などの超能力を得たこと。「あの世」の素晴らしさを知って「早く死にたい」のに、なかなか死ねず事故の後遺症で苦しみ続けるダニオン。おそらくカルマを清算しているのだろう。
★★★

5月14日 映画:『ザ・ボーイ 人形少年の館』(ウィリアム・ブレント・ベル監督、2016年アメリカ、97分)
・・・・・原題 The Boy 呪われた館もの、怨念の人形もののオカルトホラーかと思っていたら、最後に貞子&サイコ系のアクションとなる。別記事で紹介した『ディスコ―ド』(2012年)と同じ趣向である。人形を目くらましとして使ったのが才気煥発。
★★

5月15日 本:『四国遍路のはじめ方』(串間洋著、2003年明日香出版社)
・・・・・リフレッシュ休暇や大型連休を利用して3年かけて「区切り打ち」四国遍路を達成した中年サラリーマンの指南本。すっかり四国の魅力にとりつかれた著者は、掬水へんろ館というブログを立ち上げて四国遍路に関する有益な情報を配信するまでに。(現在更新停止しているらしい) 四国遍路がブームとなり、インターネットが登場し、海外からも巡礼者が訪れるようになった現在、著者が回った90年代とはずいぶん変わったこともあるのかもしれない。スマホ持って歩くのはつまらない気がする。
★★★


5月18日 本:『続・未来からの生還 あの世へ旅立つ人々への贈り物』(ダニオン・ブリンクリー、ポール・ペリー共著、1995年原著、1997年同朋舎)
・・・・・雷に打たれて臨死体験したダニオンは、予知能力と読心術を身につけて生還したものの、その力をどのように生かせばよいか戸惑う。ギャンブルに悪用(?)したり、友人の交通事故を未然に防いだり、不用意な発言によって周囲の人のプライバシーに踏み込み傷つけてしまったり・・・。最終的に、エイズ患者等の末期患者をケアするホスピスのボランティアをすることで、つまり安らかな死への旅立ちのお手伝いすることで、この能力および彼の臨死体験は十全に生かされることになる。本筋とは直接関係ないが、「ストレスは得てして、自分の人生の真の目的に無頓着なときに生じる」という一文に思わず唸った。
★★★

5月19日 本:『臨死体験で見た地獄の情景』(アンジー・フェニモア著、1995年原著および同朋舎)
・・・・・過去のトラウマ(性虐待)に苦しめられ自殺を決行した主婦である著者は、「煉獄」に落とされてしまう。すんでのところで大いなる光に救われて、自己の人生を回想し、光より闇を選択し続けていた間違いに気づき、生還する。本書の前半は自殺未遂に至るまでの著者の壮絶な半生が語られる。まったくの自分史であり、邦題とずれているように思われるが、著者がなぜ自殺という最悪の選択をしてしまったか、そしてそれがなぜ間違っているのかを知るには、この叙述が必要不可欠なのだと分かってくる。人生における一瞬一瞬の選択の積み重ねの当然の帰結として「来世の自分」がある。原題は Beyond the darkness「闇の向こうに」
★★★★

5月20日 映画:『彼女はパートタイムトラベラー』(コリン・トレボロウ監督、2012年アメリカ、86分) ・・・・・原題は Safety Not Guaranteed (安全は保証しません) 新聞広告に掲載された「タイムトラベルの同行者募集します」の記事を見て、広告主を取材しに行った3人のどこかトンチンカンな編集者。果たして当人は本気なのか? 3人はそこで何を見たのか? SFファンタジー+コメディ+人生ドラマといった趣き。全体にユーモラスでとぼけた味が冴えている。これは拾い物!
★★★   

5月24日 映画:『64 ロクヨン』(監督:瀬々敬久、2016年、前編121分・後編119分)
・・・・・横山秀夫原作のミステリー。全編240分という長尺であるが、ダレなく手抜きなく、うまく捌いている。とりわけ警察と記者クラブのスリリングな対決を描いた前編が秀逸。肝心の謎解き部分である後編はやや設定に無理を感じる。他人の娘を誘拐し殺害する犯人もまた、二人の娘を愛する父親であるというのが心情的に腑に落ちない。役者は主役の刑事演じる佐藤浩市、妻役の夏川結衣、記者クラブ幹事の瑛太、むろん三浦友和が良い。

★★

5月26日 秩父34ヵ所札所めぐり第3日
・・・・・第24番から第30番まで。秩父鉄道沿線を三峰口まで歩く。


5月29日 本:『四国徧禮道指南 しこくへんろみちしるべ』(眞念著)
★★★