2004年光文社

 『ドレミの歌』『南国土佐を後にして』のヒットで知られる歌手のペギー葉山(1933-2017)は、愛する夫・根上淳(1923-2005)を在宅介護の果てに看取った。本書は、根上が糖尿病による脳梗塞ではじめて倒れた1998年夏から本書刊行までの6年間の日々が描かれている。

 ペギー葉山は知っていたが、根上淳はよく知らなかった。
 水戸黄門や土曜ワイド劇場はじめ、たくさんのテレビドラマに出ているので顔を見れば、「ああ、この人か」と分かるだろう。が、大映の二枚目看板スターとして人気絶頂だったという50年代の頃を知らないので、名前を聞いても「誰??」という存在だった。
 テレビ時代の一番の代表作で、もっともソルティが覚えていそうなのは、『帰ってきたウルトラマン』のMAT隊長伊吹竜役であるが、『ウルトラマン』のムラマツ隊長(=小林昭二)や『ウルトラセブン』のキリヤマ隊長(=中山昭二)に比べると、どうも印象が薄い。前者二人にくらべると、あまりに顔が整い過ぎて、インパクトに欠けたのかもしれない。
 根上淳はクォーター、つまり父親がハーフで、祖父がオーストリア人だったという。

 ペギー葉山は、退院して自宅に戻った根上を、歌の仕事を続けながら在宅介護した。
 糖尿病について一から勉強し、厳しい食事&水分制限を隙あらば破ろうとする夫に目を光らせ、血糖値と体重を定期的に測り、インシュリンの注射を習い、リハビリを手伝い、息子と協力して入浴介助する。2000年に夫の人工透析が始まると、難病認定の申請をし、始まったばかりの介護保険を活用する。その合間に、歌手生活50周年の全国コンサートや海外公演を行う。
 なんともパワフルで有能な女性である。『ドレミの歌』のイメージ通り生来の楽天家であることが、苦難に立ち向かう源になっているのを感じた。

 糖尿病の進行過程や患者の苦しみ、ケアの留意点、介護者の苦労がよく分かる介護テキストとしても役立つ。


銭壷山合宿 011
瀬戸内海