1945年原著刊行
1990年邦訳(三交社)

 原題は『SHINTO THE UNCONQERED ENEMY 神道 征服されざる敵』
 著者はアメリカの文化史家である。
 占領国日本を平和のうちに統治し民主主義国家へと改良するためには、日本の軍国主義イデオロギーの母胎となり、かつ日本人の国民性の基盤でもある神道についてよく知る必要がある――という視点から研究され叙述された神道論。神道、仏教、儒教の混合で構築されている(当時の)日本人のアイデンティティを探っているという意味において、外国人の目を通して見た日本宗教史としても読むことができる。

 訳者の生江久が指摘しているように、

 欧米の民主主義と合理主義が、そして列強としての覇権主義が、戦前の、そして戦後へと向かおうとしている日本を、どのように見ていたのか、またどのように方向づけて行こうとしていたのかを知るには、恰好の材料を提供してくれている本である。

 当然、勝ち組である連合国やアメリカ(GHQ)にとって都合の良い材料の選定や見方というバイアスはかかっている。純粋に客観的で正確な日本文化史とは言えまい。(純粋に客観的で正確な歴史書なんてあり得ない。日本の学者が書いたとしたって、それは同じことである)。
 天地垂迹(神仏習合)の起源を空海としたり、『源氏物語』を武士の源氏(源頼朝ら)の物語としたりという、思わず頬がゆるむような、ごく基礎的な間違いも犯している。
 が、本書の内容についての是非は置いといて、敵国について、これだけ精細な、質の高い、目的意識の明確な研究をなし得るという科学的・合理的精神だけは認めざるをまい。
 その精神に日本は敗れたのである。


夕焼けと鳥居