気温30度を下回る曇天の2日間を利用して、一泊二日の巡礼を挙行した。
第3日から実に3カ月以上の間があいた。
今回(5日目)で結願の予定だったが、思った以上に随所で時間を取られ、残り一ヵ所34番水潜寺を次に回すことになった。
やはり、そう簡単に満願とはいかないようである。
(本心はもう一度秩父に行けて嬉しい)

秩父巡礼4~5日 074


●挙行日  2018年9月2日(日)
●天気   曇り時々雨(最高気温23度)
●行程
08:15 秩父鉄道・三峰口駅
       歩行開始
09:10 県道37号を秩父市から小鹿野町に入る
10:00 両神温泉薬師の湯
       休憩(15分)
11:30 たらちね観音
       休憩(15分)
12:00 観音茶屋
       昼食(30分)
12:40 第31番・観音院門前
13:00 観音堂着
       御朱印もらう
       院内散策
14:10 観音院門前発
16:00 十輪寺
       御朱印もらう 
16:15 須崎旅館着
       歩行終了  

●所要時間 8時間(歩行時間5時間40分+休憩時間2時間20分)
       ・・・休憩時間には各寺での滞在時間を含む
●歩行距離 約23キロ(毎時約4キロ)


7時20分、西武秩父駅到着。
駅前広場から仰ぎ見る武甲山はすっかり雲隠れ。
路面が濡れているのは、ついさっきまで雨が降っていたから。

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御花畑駅で秩父鉄道に乗る待ち時間に、第13番慈眼寺に寄り、今回の遍路の無事を祈る。
気持ち的に観音に憑いてもらう。
これで同行二人なり。

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秩父鉄道終点の三峰口駅。
ピラミッドのように幾何学的な御岳山(1,081m)に見送られ、いざ歩行開始!

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白川橋で荒川を渡る。
ここ数日の豪雨で濁流轟々たる。

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国道140号線から左に贄川宿(にえがわじゅく)に入る。
ここは案山子の里として最近注目されるようになった。
綿や布切れやペットボトルを利用して作った、ほぼ等身大の人形たちが旅人を迎えてくれる。
怖いものあり、可愛いものあり、滑稽なものあり。


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県道37号線に入る。
ここから延々10キロほどの一本道である。
単調でつまらない山間のアスファルト道かと思っていたら、ところどころ集落があったり、庭先の花ゆかしげな民家があったり、犬の鳴き声けたたましいペットショップがあったり、見事なデザインの洋風建築があったり、楽しみには事欠かない。


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秩父市から小鹿野町へ入る

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近くに民家がないから、いくら吠えても大丈夫

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採光、風通しの良い家の造り(兜造り)は
かつて養蚕をやっていたことを示す


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秩父鹿鳴館? いやいや近藤酒店(いまも営業中)の建物
大正十三(1924)年築。現在はギャラリーとして開放し演奏会や展覧会を開催



時折ぱらつく小雨に濡れながらなおも進むと、左手に懐かしの四阿屋山が見えてきた。
一度登った山は、昔つき合った恋人のよう。
いや、一夜限りの添い寝の相手か。
ギャフン。

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両神温泉薬師の湯

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地場産の新鮮な野菜がいっぱい

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法養寺薬師堂

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両神神社
本社はもちろん両神山頂にある


このあたりは、2005年10月1日に小鹿野町と合併するまでは両神村と言った。
日本百名山の一つで、イザナギ、イザナミの開闢夫婦神を祀っていることからその名のついた両神山(1,723m)にもっとも近い村である。
秩父のどの山頂からも、神々の食卓のようなテーブル状の山容が一際高く目立つ、神秘の山である。
いつか登りたい。

両神山
蓑山から望む両神山


かつての両神村中心部に入り込む。


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広大なグラウンド(土地があまっているなあ)


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町役場両神庁舎(かつての村役場)

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薄川の木橋
 時代劇にまんま使える渋さ

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両神集落を離れ、山間を抜けると、国道299号線に出る。
しばらく、稲穂実るのどかな風景の中を進む。


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行く手に観音山を希む


観音山に向かう谷沿いには、母子の幸せを見守るたらちね観音、水子地蔵寺など、親子の因縁まつわる信仰スポットが並ぶ。
軽い気持ちで素通りできる場所ではない。

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たらちね観音
宗教法人光珠院により昭和43年開山

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愛のむきだし』に出てきた満島ひかりのマリア姿に酷似
慈母というより鬼子母神のよう(産後ストレス?)


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「たらちね」とは乳が豊かに垂れているさまを言う。
「母」につく枕詞である。


左手に民芸風の観音茶屋出現。
そういえば昼飯がまだであった。
ここいらで一服するか。

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とろろそば

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店内には古民家風の展示・休憩スペースがある

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ところせましと並ぶ薬草酒

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精のつくこと間違いなし!

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地元の作家が造った人形たち


腹が落ち着いたところで出発。

道路両側の小高い丘の斜面いっぱいを覆い尽くす紅い花畑。
なにを栽培しているのだろう?

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芝桜には遅すぎる。
彼岸花にはまだ早い。
まさかケシ?
そりゃ、ケシからん!


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花と見えたのは、なんと水子地蔵の風車だった。
気づけば、若者から中高年までの夫婦姿がちらほら。
生まれる前に失くした子供のことだろうと、人はいつまでも忘れられないのだと実感。
それにしても、この数!!

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その名も観音トンネルを抜けて、沢沿いの道をひたすら行くと、右手に小さい木橋と朱塗りの門が見えてくる。

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第31番・鷲窟山観音院

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一本石づくり・日本一の仁王尊像

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このたくましい腕を見よ

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明治元年完成(黒沢三重郎、藤森吉弥作)

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この充実したふくらはぎの筋肉を見よ


ここから296段の石段を登る。
長距離歩行でくたびれた足にはしんどいかと思ったら、そうでもなかった。
石段は直線でなくて、つづれ折になっているので、傾斜はそれほどでもない。
階段の両脇には、句碑やユニークな表情の仏像が立ち並び、気がまぎれる。


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登り口にある手の像の礎石には坂村真民「念ずれば花ひらく」の詩句が刻まれている


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石段を登り終えると、まず目に入るは鐘楼である。
慈悲の瞑想を唱えて大きく一つ搗くと、山間に放たれうち沈む余韻嫋々たる響きと共に、心の中のざわめきも消えてゆく。

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澄んだ心が向かうのは、大岩にすっぽり包まれた観音堂と、その隣りで激しく落下する世にも清浄なる滝。
間違いなく、滝と大岩との連合が、この地を聖地としたに違いない。
誰だって、自然のつくる驚異に瞠目せずにはいられまい。
ここに神社なり寺なりができるのは、必然である。

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観音堂

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その名も聖浄の滝(落差60m)
水のない時期もある

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埼玉県指定史跡「鷲窟磨崖仏(しゅうくつまがいぶつ)」
一説では弘法大師の作とも


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携帯電話大の仏さまが何十と立ち並ぶ

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ご朱印をもらって、東奥の院に登る。
ここからは観音山の頂きはじめ周囲の山々が眺められる。
西奥の院は現在通行止め。
岸壁の洞窟に仏像が並んでいるのが対壁から伺える。
滝の前のベンチでしばし瞑想。

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観音山頂き

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東奥の院の祠

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西奥の院の洞窟(崖の中腹あたり)

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予定では、今日はこれ(31番)で終了である。
あとは小鹿野中心街に予約した旅館に行くだけ。
が、実はソルティ、もう一箇所、ご朱印をもらおうと決めていたお寺があった。
秩父札所34ヶ所以外のお寺である。
その名を十輪寺という。

明治維新の廃仏毀釈・神仏分離以前は、いま秩父神社のある場所が札所15番であり、その名を母巣山蔵福寺と言った。

 この廃仏騒ぎの時、住職は神官に転じ、仏号は広見寺に預け、本尊は同じ社地にあった宗蔵院の縁で、その本寺の小鹿野の十輪寺に十円で売り渡してしまったという。
 しかしその後観音信者たちが動き出して、当時の郡役所に霊場復活を願い出て、ようやく認められ蔵福寺と少林寺が合併する形になって、この札所(ソルティ注:15番)が復活したという。しかし本尊はあとで小鹿野に訪ねてみたら、今も十輪寺に安置されて、門前には「補陀場十五番」の石柱が立っていた。
 してみれば百年以上たっても十五番札所が二か所あるということか。どちらも認めれば三十五観音になって数がおかしくなる。(福田常雄著『秩父巡礼ひとり旅』、現代書林)


小鹿野の十輪寺には、なんと札所第15番にもともとあった本尊(十一面観世音)が祀ってあるのだ。
ここを参ってご朱印をもらってこそ、真に満願達成というべきだろう。
うまいことに、十輪寺は小鹿野の中心街、宿泊する宿の近くにある。
しからば、一路、宿へ。

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吉田牧場

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雨が降ってきた。
これまでなんとか雨具を使わずに歩いてこれたが、雨脚は強くなるばかり。
止む気配がない。
小鹿野中心街に入る前のバイパス沿いにあるLAWSONで、しばし雨宿り。
リュックから買ったばかりの紫色のポンチョを取り出す。
これ、尾瀬ハイキングの際に会津高原尾瀬口駅のみやげ物店で300円で購入したものである。
ついに出番が来た。
竹笠とポンチョでなんとかしのいで、宿まで頑張ろう。


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十輪寺(第15番本尊安置所)

秩父巡礼4~5日 090


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納経所の女性に聞くと、秩父巡礼する人でこの十輪寺にご朱印をもらいに来る人は年に数人だとか。
ソルティが知ったのは、まったく秩父巡礼の先輩福田常雄さんのおかげである。


少林寺御朱印
15番少林寺御朱印

十輪寺御朱印
もと15番「秩父神社&十輪寺(本尊所有)」の御朱印


時刻は16時を回った。
宿入りするには良い頃合である。
ポンチョバリア圏外にあった靴は、ぐっちょり濡れている。

本日の宿は、須崎旅館である。


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