★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★    読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★     いい退屈しのぎになった
★       読み損、観て損、聴き損


Jellyfish


12月6日 本:『さまよう記憶』(サンドラ・ブラウン著、2014年刊行、2015年集英社文庫)

・・・・・アメリカン・ロマサスの女王の代表作。ロマサスとはロマンティック・サスペンスのこと。ありていに言えば、「女性視点のちょっとエッチなミステリーサスペンス」である。この作品はミステリーサスペンス部分がよくできていて読ませる。
★★

12月9日 本:『「律」に学ぶ生き方の智慧』(佐々木閑著、2011年新潮社選書)
・・・・・当ブログでもたびたび紹介する花形仏教学者による「律」の入門書。仏教における「律」の大切さがよくわかる。「律」の観点からオウム真理教の過ちをぶった切った部分が面白かった。
★★★

12月12日 本:『マークスの山』(高山薫著、1993年早川書房刊行、2003年講談社文庫)
・・・・・いまさらの名作。この作家、きわめて男性的な作風である。それこそロマサスとは対極に位置する。寝食忘れる面白さは間違いない。が、連続殺人犯マークスの殺人動機が、マークス自身の過去のトラウマとリンクしていないのは勿体無い。これでは犯人をマークスに設定する必然性がない。
★★

12月15日 本:『刑務所で死ぬということ』(美達大和著、2012年中央公論社)
・・・・・著者は二人の命を奪った無期懲役囚。重罪者が入れられる刑務所(LB刑務所)で「もう二度と娑婆に戻らない」と決意して刑に服している。塀の中から見た現代の刑務所の実態が面白い。昨今「人権」の声かまびすしく、収容者に随分甘くなっているのは間違いないようで、著者はそこに疑義を申し立てている。是非はともかく、著者の教養の高さに驚く。
★★
 
12月17日 本:『蛍の森』(石井光太著、2013年新潮社刊行、2016年同文庫)
・・・・・四国88札所中、最も標高の高い67番雲辺寺(香川、愛媛、徳島の境)を舞台に、戦後間もない頃にあったハンセン病の遍路に対する地元住民たちの凄まじい差別と暴力を描く。ノンフィクション作家によるフィクションではあるが、『砂の器』に見るように、ここに描かれていることは実際にあったとしてもおかしくはない。「お接待」が光なら、これは「闇」の部分である。
★★ 

12月22日 本:『ボクは坊さん。』(白川密成著、2010年ミシマ社)
・・・・・著者は四国札所57番栄福寺の住職。1977年生まれ。祖父の後をついで24歳のとき住職となる。これは若く志高い新米住職の身辺記である。四国遍路で実際に訪れた栄福寺は、小さいけれど、自然に囲まれ、静かで落ち着いた雰囲気の好印象のお寺であった。納経所の女性の対応も良く、うまく運営されているんだなあと感じた。
四国遍路する人の実数は年間5~10万人と言われる。全部が全部ご朱印をもらう遍路ばかりではないとしても、ご朱印収入だけでも少なくとも5万人×300円=1500万円が予想される。88箇所のお寺に数えられているというのは非常に恵まれた立場なのである。本書を読んで何より感じたのは実はそこ(著者のボンボンぶり)であった。別に批判しているわけではない。
★★

57番栄福寺
57番栄福寺

12月24日 本:『幽霊物件案内』(小池壮彦著、2000年同朋舎)
・・・・・タイトルどおり、幽霊が出ると噂される各地の学校・会社・病院・飲み屋・喫茶店などを紹介している。さすがに実名は挙げられていないが、このネット時代、調べれば分かるであろう。別に知りたいわけではないが・・・。怪談そのものよりも、「病院」の章で語られている藪病院の実態がよっぽど怖かった。
★★ 

12月26日 本:『その女アレックス』(ピエール・ルメートル著、2011年刊行、2014年文春文庫)  
・・・・・映画にもなったフランス発の犯罪小説。ソルティがその評価に大きな信頼を置いている「イギリス推理作家協会賞」を受賞している。読んでみたら、予想を裏切るような展開の連続で、面白かった。全裸女性(アレックス)を積めた木箱を天井から吊るして監禁など、グロい暴力シーンがたくさんあるので映像で見るのはなかなかきついかもしれない。誘拐されたアレックスを捜索する刑事チームの面々が個性的かつ人間的で、著者の小説家としての力量を感じる。身長145センチのデッサンの得意な警部ってのはどうしてどうして魅力的じゃないか。
★★★

12月28日 本:『大乗非仏説をこえて 大乗仏教は何のためにあるのか』(大竹晋著、2018年、図書刊行会)
・・・・・40代の仏教翻訳家による大乗仏教論。最高に刺激的である。
★★★★

12月30日 本:『村の奇譚 里の遺風』(筒井功著、2018年、河出書房新社)
・・・・・民俗研究家によるエッセイ。日本各地の知られざる風習や遺跡が紹介されている。安部清明の墓が各地にこんなにあるとは知らなかった。やっぱり、謎の多い人物だ。差別表記をめぐる出版社とのやりとりが嘆息されているあとがきも面白い。
★★★