2017年オーストリア
101分
原題はライフガイダンス(Life Guidance)
「最適、成長、挑戦」を合言葉にする理想的な管理社会に息苦しさをおぼえ、疑問を抱いた妻子持ち中年エリートのささやなる反抗とその顛末を描く。
ジョージ・オウエルの『1984』を皮切りに、『未来世紀ブラジル』(1985)、『アイランド』(2005)などこの手の作品は山とある。
その意味でテーマそのものは凡庸である。
だが、美しくスタイリッシュな映像と無駄のない脚本およびセリフは、ルース・メイダー監督という無名監督の才能の高さを感じさせる。
SFのようでありながら現代社会への痛烈な批判になっているところも、深い洞察力と哲学性を感じさせる。
SFのようでありながら現代社会への痛烈な批判になっているところも、深い洞察力と哲学性を感じさせる。
管理社会からの抜け道を探してもがくアレクサンダーが、社会のはみ出し者たちの集まる森の家に招かれるシーンがある。
旧社会に属する老人の一人が言う。
旧社会に属する老人の一人が言う。
「お前らエリートはやりたい放題だ。禁煙、禁欲、トランス脂肪酸の使用禁止、安心な老後、一望できる屋上テラス、だれもがブランド品を持つ、手づくりのフェアトレード玩具、不労所得、知らない顔ばかりのパーティ、交通量規制、市民参加のプロジェクト、カプセルコーヒー。お前らは働かずに金を儲けようとする。・・・・・・・この仕組みが不満か? だがこの仕組みを作ったのはお前ら自身だ」
ITを駆使したモニタリング(監視システム)、キャッシュレス社会、数値で測られる心と体の健康、他人のお金を右から左に動かすだけで莫大な富を得る人々、エリートと低所得者との二極化。人間を最適化するシステム。
これは近未来というより、ほぼ現代近接社会である。
紙一重じゃなくて、ギガ一桁の差だ。
評価: ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
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