1968年イギリス
111分

キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1971年)のおっかない不良少年役で一世を風靡したマルコム・マクダウェルの映画デビュー作。
ここでも反体制の暴力少年を演じている。
というか、本作を見たキューブリックがマルコムに出演オファーしたらしい。

厳しい規律と管理が行きわたるイギリスの全寮制パブリックスクールの実態と、それに反抗するミック少年(=マルコム・マクダウェル)らの闘いを描く。
英国階級制度を批判する過激な内容のため公開当時は賛否両論が巻き起こったらしい。
が、直後に起こったフランスの5月革命とそれに続く世界的な学園紛争の嵐の中で、時代を予言する作品となった。
第22回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。

いじめ、同性愛、体罰、教師や上級生への絶対服従など、一昔前のパブリックスクールの実態がよく描かれていて面白い。
リアリティある日常生活が、徐々に現実か妄想かわからないファンタジー風に変貌してゆくのは、現実として描ききってしまうことで巻き起こる非難を緩和するための予防措置だったのだろうか。
現実はもっと先を行っていたというのが凄い。

校舎


やはりマルコム・マクダウェルの存在感が強烈である。
ベテラン俳優も含め、ほかの役者を全部食ってしまう。
とりたてて上手いわけでも、ハンサムなわけでもないのだが、雰囲気(オーラ)が違う。
この作品の成功の8割はスタッフが彼を見つけた時に決したに違いない。


TSUTAYAで借りたDVDには特典映像として、アンダーソン監督の短編映画『木曜日の子供たち』が入っている。
聾の(耳の聞こえない)子供たちへの教育現場を描いた20分ほどのドキュメンタリー。
実は、こちらの映画の方が断然面白く、良かった。
両編あわせての評価である。


評価: ★★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損