2014年ブラジル
96分

「若いっていいなあ~、青春だなあ~」って素直に思わせる良品である。
年明けから結構重たい本や映画が続いていたので、ホッと安らいだ。

と言っても、撮りようによっては、これ実はかなり重たくなる題材である。
主人公の少年レオは、生まれつき目が見えないうえに、ゲイなのだ。
二重のハンディを持つ少年の初恋物語なのである。
これが応援せずにいらりょうか。

レオ(♂)と、幼なじみのジョバンナ(♀)はいつも一緒。
そこにイケメン転校生ガブリエル(♂)が入り込む。
男二人と女一人。
三角関係になって、ジョバンナとガブリエルが結ばれて、レオは一人取り残されるのかなあと想像していたら、疎外されたのはジョバンナであった。
レオとガブリエルは相思相愛だったのである。

良かったね、レオ。
――と思っていたら、ここからが大変。
互いをノンケ(=ヘテロセクシュアル)だと思っている二人は、告白のしようもなく、時間ばかりじれったく過ぎてゆく。
ほんとにねえ。
好きな相手に素直に「好き」と言えることがどれほどラッキーなことか、世のヘテロたちには分かっていないよなあ~。

興味深かったシーン。
プールで泳いだ後、シャワー室に二人きりとなったレオとガブリエル。
ガブリエルは水着を脱いで素っ裸になる。
好きな人の裸を前に普通ならドギマギしてしまうところだが、もちろんレオにはその姿は見えない。映画を見ている我々がそこで受けるなにがしかの刺激を、登場人物であるレオは共有しないのである。
逆に、自分の隣で水着をおろすレオを見て、ガブリエルは興奮してしまう。
思わず体の一部が反応して、あわててそれを隠そうとする。

もし目が見えていればここで、ガブリエルが同士(ゲイ)であること、自分に欲情していることを、レオは知るはずである。
「ブルータスお前もか」
一つのシャワーの下、角突き合わせ抱き合う二人・・・。
ハッピーエンド。

ところが、レオにはそれが見えない。
だから、ガブリエルの気持ちがわからないままシャワーを終える。
ああ、せっかくの濡れ場(チャンス)が・・・。


シャワーの男


目の見えない人の性(セクシュアリティ)は、当然目の見える人と違う。
目の見える人(とくに男)は、視覚刺激が圧倒的に強い。
妄想もまた視覚刺激の一つと言っていい。
目の見えない人は、聴覚や嗅覚や触覚によって刺激を受ける。
生まれつき「見る」ということを知らなければ、妄想も持たないかもしれない。

そこには、目の見える者には想像のつかない不思議な世界があるのだろう。




評価: ★★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損