横浜近辺に用事があったので、ついでに京急線に乗って金沢文庫まで足を延ばした。
「鎌倉時代に北条実時が作った図書館」と歴史の授業で学び、その存在は知っていたが、行くのははじめてだ。


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京急線・金沢文庫駅


駅から15分くらい閑静な住宅街を歩く。
海が近いとは想像しがたい。

金沢文庫は金沢流北条氏の菩提寺である称名寺の境内にある。

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称名寺赤門

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立派な仁王門


門の向こうに広がる風景はまさに浄土。
朱塗りの太鼓橋が水面に反映して美しい。
今は橋以外に目立つ色彩もなく地味な風情だが、春は桜、夏は黄菖蒲、秋は紅葉、と季節ごとの美しさが楽しめるそうな。(案内してくれた市民ボランティアの話)


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コウノトリ?


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古色蒼然たる金堂


北条実時の邸宅跡を横目に、山をくり抜いたトンネルの向こうに金沢文庫がある。
もっとも、元々の金沢文庫は北条氏滅亡とともに衰退し、蔵書のほとんども後北条氏、徳川家康、前田綱紀らによって持ち出されたとのこと。
いまある建物は平成2年(1990年)に新築されたもので、称名寺が所有する国宝や重要文化財を中心に展示公開している。

本日は、『顕われた神々―中世の霊場と唱導―』という特別展の最終日前日であった。


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金沢文庫

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ポスター
これに呼ばれたか?


特別展は、「中世の主要な社寺の神仏にまつわる縁起」などを説いた唱導資料を中心に、中世の神道の姿を浮かび上がらせる試み。
概して、神仏習合における天地垂迹を表した展示が多かった。

むろんソルティは門外漢だが・・・・・。
鑑賞して思ったのは、仏教がいよいよ武士や庶民にまで浸透してきた鎌倉時代、日本各地の神社はかなり焦燥感を抱いたのではないかということ。
天地垂迹説によって大乗仏教の仏たちと日本の神たちを強引に結び付けて、新たな縁起譚を創作し、なんとかそれぞれの神社の由緒と存在意義を高めて延命を図る必要にかられたのではないか。
古代なかった神像がつくられるようになったのも、目に見えて有難くも美しい姿形を持ち、その面前で祈ることができる仏像の効用に負けまいという気持ちからではなかったろうか。


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鑑賞後、称名寺の裏山に登った。
「まだあるの?」と言うくらいに階段が続き、思いがけない高度であった。

頂上の八角堂から見えるは、左手に八景島、東京湾、その向こうに房総半島、右手は横須賀、観音崎、ぐるりと取り囲む伊豆の山々。
ビルや高速道路のない時代は天下の絶景だっただろう。


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八角堂


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山道を歩き続けると、北条実時の墓所に至る。
大変な勉強家かつ教養の主だったらしい。
お気に入りの場所に葬られて満足であろう。

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▲を3つ並べた三つ鱗が北条氏の紋

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北条実時の墓


その先の空き地で、木にロープを吊るし、体にベルト状の装具をつけて奮闘している男と遭遇。
「なにをしているんですか?」と聞くと、
「ツリー・クライミングの練習です」

そんなものがあるとは知らなんだ。


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話を聞くと、庭師さんであった。
神社などの高い木の枝を剪定することがあるが、道が狭くてハシゴ車が入れないことが多い。
そういう場合に、
 ① 登りたい木の高い枝に弓を放ってロープを引っ掛ける。
 ② 一端を手近な木の幹などに結び付けて固定する。
 ③ 枝から垂れたもう一端を自分の装具につける。
 ④ 幹に足をかけつつロープを頼りに登る。

そんな要領らしい。(詳しくはこちら参照)
単純に趣味というわけではなかったのだ。

見たところ、ソルティと同年代(50代)くらいの男。
いまからクライミングを一から学ぼうとするとは!

やるなあ~。