2017年
イギリス・アイルランド合作
121分

 よくわからない映画である。
 映像は美しいし、役者はみな達者だし、カンヌ映画祭の脚本賞を獲っているくらい見事なプロット(展開)と無駄のない研ぎ澄まされたセリフは一級品である。好きか嫌いかと聞かれれば「好き」の範疇に入る映画ではある。しかし、よくわからない。

 このわからなさは、往年の大監督イングマール・ベルイマンの形而上学的な作品を思わせる。旧約聖書的な匂いのするタイトル含め、物語全体がある種の比喩か寓意になっているのではなかろうか。

 スティーブン(=コリン・ファレル)は評判の高い心臓外科医。美しい妻アナ(=ニコール・キッドマン)と二人の可愛い子供と何不自由なく暮らす。
 が、スティーブンは隠れてアルコールを飲んで執刀した手術で患者を殺してしまう。罪悪感から患者の息子マーティン(=バリー・コーガン)に何かと親切に接する。
 ある日、スティーブンは自宅にマーティンを招待し、家族に合わせる。そのときから、スティーブン一家の恐ろしい受難の日々が始まった。

 このマーティン少年がどうやら特異な能力(念力か呪術か)を持つらしいのだが、正体は最後まで明かされない。殺された父親の復讐を果たすべく、スティーブンの子供たちを突然歩けなくしてしまう。医学上はなんの異常も見当たらず、手の打ちようがない。
 マーティンはスティーブンに告げる。
「このままだと子供2人とお前の妻は死ぬ。3人のうちから一人犠牲者を選べ」

 結局、スティーブンは犠牲を差し出さなければならなかった。
 事件性を立証することかなわず、スティーブンもマーティンも警察に捕まることなく、日常は回復した(かのように見える)。
 
 復讐ストーリー、不条理ドラマ、サスペンスミステリー、超常現象オカルト、単なる失敗作・・・いろいろな見方はできると思う。ソルティは、マーティンは「旧約の神」の比喩なのかなあと思った。目には目を、歯には歯を。

 よくわからないが、マーティンを演じるバリー・コーガンの不気味な演技は、二人のハリウッド名優を食うものがあるのは確かである。



評価: ★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損