1962年松竹
脚本 木下惠介
音楽 木下忠司

 文句なしの傑作コメディ。
 才知長けた脚本とセリフ、軽やかなテンポ、生き生きとした役者の演技。軽妙洒脱という言葉はまさに木下惠介のためにある。

 役者たちの素晴らしいこと!
 割烹の看板娘を演じる岡田茉莉子は、地に近いんじゃないかと思われる気の強さ。この演技で第17回毎日映画コンクール女優主演賞をもらっている。
 その両親役は三遊亭圓遊(4代目)浪花千栄子。息の合った絶妙な掛け合いは筋金入りの喜劇役者ぶり。
 女中役の若水ヤエ子も負けてはいない。薬屋の息子にフラれた次第を愚痴る、本来ならしんみりするシーンで存分に笑かしてくれる。
 金持ち一家の婆やを演じる東山千栄子も滅法上手い。『東京物語』のおだやかな母親とはまったく違う仮面を被る。さすが昭和を代表する名舞台女優。
 出番はちょっとだが、鼻風邪を引いた先生役の三木のり平のとぼけた味も捨て難い。
 木下監督は本当に役者を生かすのが上手い。

 吉田輝雄と岡田茉莉子。美男美女カップルの恋のいきさつをメインに描きつつ、隠し味的なゲイタッチがそこかしこに伺われる。
 家同士の対立にロミオとジュリエットのように仲を裂かれんとする少年二人の友情とか、お化けが怖くて一緒に一つのベッドに入るハンサム兄弟(吉田輝雄と田村正和)とか、娘が家に連れてきた恋人候補に一目惚れしてしまう父親とか・・・・・・。

 まぎれもない木下印が刻印されている一級の娯楽作である。



評価:★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損