2004年映画「草の乱」製作委員会
118分

 1884年(明治17年)に埼玉県で勃発した養蚕農民一揆、秩父事件を描いた歴史大作。

 昨年秩父34札所巡礼した時、事件の概要を知り、決起集会の舞台となった音楽寺椋神社を訪れ、この映画の室内ロケセットが展示されている資料館を見学し、ぜひとも映画を観たいと願っていた。
 が、行きつけのTUTAYAには置いてなかった。
 このたび引っ越したので、通勤途中の乗り換え駅の盛り場にある大きなTUTAYAに鞍替えすることになった。

 初めて店舗に足を踏み入れて狂喜した。
 在庫が豊富であるうえに、いままでの店になかったレアな(マニアックな?)作品がある。
 中でも、小津安二郎、溝口健二、木下惠介、黒澤明、市川崑、大島渚、増村保造ら日本映画黄金期の名監督の傑作・良作・野心作・話題作がずらりと並ぶコーナーが特設されていたのは、「宝の山発見!」の嬉しさであった。
 この店でついに『草の乱』と遭遇した。

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 やはり、自分の足で丸6日間100キロを歩き通したゆかりの土地が画面に出てくると、懐かしくも興趣をそそる。
 むろん、現在と130年以上昔の秩父とはすっかり面変わりしている。ロケセットに見たような古い家屋敷や立派な商家の街並みは消えてしまったし、基幹産業であった養蚕を営む農家を見つけることはもはや難しい。
 
草の乱ロケセット
「草の乱」ロケセット


 だが、主要なお寺や神社などのたたずまいは昔とそれほど変わっていない。
 武甲山を親玉とする秩父の山々の影や、街と丘のはざまを流れる荒川や、山辺の巡礼路の森など、自然も変わっていない。
 地名も昔のまま残っているものが多いので、登場人物たちの暮らす村々の位置関係や武装蜂起した農民たちの足取りもたどることができた。秩父の地理が頭の中に入っているからである。
 逆に言うと、秩父に土地勘のない人にとっては、わかりにくいんじゃないかという気がした。秩父の地図を手元に置いて観ると良いかもしれない。
 
 記録映画と言ってもいいくらい、史実に忠実に丁寧に撮った映画である。
 緒形直人、林隆三、杉本哲太、田中実、岡野進一郎ら、主要な役者たちの表情がいい。
 彼らの使う「~でがんす」(~でございます、の意)という秩父方言が耳に残った。


秩父風景
秩父の名峰・武甲山



評価:★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損